第24話 服従


 くそっ! 今回も迷っただと!? あれだけ確認したのに! もう、ギルドには戻らず直で洞窟向かってやる。


 それにしてもここはどこだ? 湿地帯のような感じだが、それにしてと薄暗いな。足場も悪いし、これはさっさと帰った方がいい感じだな。よし、行こう。


 ……うん。ちょっと思ってた。だって迷ってここまで来たのに迷わずここから出られると思った? まずいな……どうにかしないとこのまま時間だけが進む。


 俺は止まってることが苦手だ、迷っている時はなおさらな。動かないと状況は変わらない。でも大概俺の場合は悪化するんだよなー。


 あ、いい方法思いついた。死ねばいいじゃん! 俺の専売特許と言っても過言ではない死に戻り! ここはちゃちゃっと死にますか!


 ……ん? 俺いつもどうやって死んでたっけ? ウサギ、毒、水、最近だと首吊りとかか。あれ、俺はいつも死ねなくなるまでやるから首吊り以外は殆ど死ねなくないか? やばい、これはかなりまずい。俺から死に戻りをとったら何が残るって話だ。急いでモンスターとエンカウントしなければ。


 おっ! やっとここの湿地での初モンス! やっと死ねるぜー。


〈Lv.21 サラマンダー〉


 よし、気の赴くままに一息にやっちゃって下さい!!


 あれ? まだ死んでないの? おかしいな、そろそろだろ? HPどうなってんの? って、あ! 自動回復で全回復してるじゃん! まさか、相手の攻撃が俺の回復に追いついてない!? 俺が強くなりすぎたか! それはそれで嬉しいが普通に相手も弱いんだろうな。これはまずい。早急に対処せねば。


「今日はとことん上手くいかねーな……」


 しょうがない。もっと強いボスモンスターを探しに行こう。それしか方法はない。


 かなり奥まで来てしまった……と思う。よく分からんが。まあ他にも結構モンスターとはエンカウントしたんだが、いかんせん相手が弱すぎる。これはここのボスクラスじゃなきゃ、無理っぽいな……


 もう、こんな所はこりごりだ。気分も晴れやかでないし、死ねないしで散々だ。早くボスに会って逝こう。


ーーー一時間後、


「見つけたあああーーー!!!」


 やっと見つけたぜ! お前絶対ボスだろ! デカイし! 流石にやってくれよ?


〈Lv.50 スワンプコンドル〉


 それにしてもデカイなー! 体長は二メートルくらいか? 翼を広げたら五メートルくらいはありそうだな。かっこいいな。


 ん? 待てよ、なんか引っかかるな……一旦思考を整理させよう。


 俺は今何が目的だ? 死ぬことだよな。何の為に? 死に戻る為に。何故? それは……迷って帰れなくなったからだな。何故帰る必要があるのか? えっと、洞窟に行くため……ってあ!


 何も洞窟に行くためにわざわざ死に戻る必要なんてないんだ! そうだよ! さっきも直で行ってやるとか言ってたじゃん! 直で行けば良いんだよ! ……飛んで!!


 やばい、俺天才かもしれない! めっちゃ冴えてる! しかも俺にはオークの時ゲットした服従がある。これで従えさせることができる。うわなんで今まで思いつかなかったのかなー。めちゃくちゃ頭いいじゃん! まさに発想の転換! ってやつだな!


 よし、なら早速!


「【服従】っ!」


「服従に失敗しました」


「なっ!」


 まじかよ。そういえばレベル差が大きければ大きいほど成功確率が上がるって書いてあるな。俺、今54レベだからな、失敗するのも妥当だな。んー、でもそんなすぐにはレベル上がらないだろ。


 服従といったら、名前的に実力差を示して圧倒的な力で相手の有無を言わさずに屈服させるって感じだよな? 少しこいつボコすか。


 まずは一発。


「キャアアアアーー!!」


 おぉ、まだまだ元気だな。だがそれが何時まで持つかな?二発目っ!


「キェエエエエーーー!!!」


 おー中々効いてるみたいだな。反撃が激しくなってきたな。でもなー、俺が飛ぶことを思いつくまで考えてる時、お前俺を攻撃してたよな? それで今お前が殴られるってことはそういうことだよ!三発目ぇ!!


「ギャアアアアアアアアーーーー!!!!」


 おー。もう、死にそうな声出してるじゃん。そろそろ行けるか?


「【服従】!!」


「スワンプコンドルの服従に成功しました。」


「名前をつけますか?」


 お、名前付けれんのか。まるで某モンスターゲームみたいだな。まあいいか、確かに今のままだと少し長いし、初めてのしもべだから、これからも役に立ってほしいという思いを込めて……


「ハーゲンだな! これからよろしく!」


 だって頭禿げてるんだもん、しょーがないだろこれしかねーよ。現実のコンドルもハゲタカって呼ばれてるらしいし、みんな同じ思考回路だったんだな。納得だぜこれしかねーもんな。


 ん? 初僕とか役立って欲しいとか言ってたじゃないかって? 思いが名前に表れてないって? 気持ちさえあればいいんだよそれは、小さい事は気にしちゃ負けだ。


 それでも文句あるやつは俺のとこまで来いよ。死ぬまで殴ってやるからよ。俺は死んでも戻ってくるから覚悟しとけよ?


 ……茶番は置いといて、これでやっと依頼の場所に行けるぜ! まずは上空まで飛んで、ホバリングしてもらって……おおー遠くまで見えるなー!


 洞窟は……っと、あそこか! 遠くに薄ら見えるぞ! あっちが始まりの街だから、方角的にも間違って無いはずだ! ここまで寄り道し過ぎたな。


「あそこの洞窟まで全速力で頼む! 出発進行だ! ハーゲンっ!」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る