第21話 危険


《ゾンビアタッカー》‥短時間で何度も何度も死に戻りする。死霊魔術の適正に補正。


 昨日から思ってたんだけど、この死霊魔術ってなんだ? 一つの称号の効果としてはあまりパッとしないし、それが三つもあるからな……相当すごい魔術で、取得するのが超むずいとか? でも確かに死霊魔術って強そうだし、普通にプレイしててもなかなか手に入らなさそうではある。


 そもそも、魔術ってどうやって手に入るんかな? 俺まだ一個持ってないし、魔法とはまた別なのかな?それとも魔術しかないのか?


 これから冒険していく身としては一個くらい持っておきたいし、まあ使ってみたいっていう気持ちもあるから、死霊魔術取得に向けて何かできればいいんだが……とりあえずギルドに行ってみるか。


 んー。ギルドでは討伐系の依頼が多いな。倒せそうな奴から超強そうな奴まで結構あるけど、どれも肉食系のマッチョな感じだな。今は死霊魔術に関する何かを求めてんだよなー。


 討伐系以外はというと……盗賊の始末や、要人の暗殺とかだな。うん、自分が死ぬ分には全然構わないんだけど、人を殺すのはなー。こっちが本業なんだろうけど、流石に抵抗がある。特段差し迫ってやらないといけないことでもないし、今はいいだろう。


 となると、残りはもうほとんどないな……ん? これはなんだ、洞窟の調査? なんでこんな依頼がギルドにあるんだ? 流石に他のギルドでもいいと思うが……


 いや、それでもここにあるってことは何かそれなりの理由があるのだろう。聞いてみるか。


「すみません。なんでこの依頼がこの暗殺ギルドに?」


「ん? あぁそれはな、この街の西にある洞窟なんだが、ちょっと前に冒険者ギルドの方で行方不明者がちょくちょく出ることが問題になってな、それで原因を探ろうと調べていく上でどうもこの洞窟が怪しいということになり、冒険者を派遣したところ、戻ってこなかった。

 事態がより深刻になり、もう冒険者ギルドでは手に負えないということで、俺らの方にこの仕事がよこされたってわけだ。

 しかし、いくら俺らといっても本来の業務もあるし危険性も高いこともあってずっと手付かずだったんだ。ん? もしかしお前が受けるのか?」


 うん、ちょっと待て、色々情報量が多すぎるから一旦落ち着きたいのと、聞き逃せない単語が出てきた。……冒険者ギルドだ。


 いや、まぁさ、俺が冒険者ギルドに辿りつけなかったのが悪いんだけどさ、やっぱりあるんだね冒険者ギルド。いや、普通に考えてギルドの広さが違いすぎないか? 冒険者と暗殺者だよ? なんか同じギルドで対等みたいな感じだしてるけどなんか階層が違うよね? 冒険者の中の暗殺者だよね? うわーなんで俺はこんな所にきちゃったんだろ?


 でも、もうくよくよ言ってても仕方ない。もう、今まででこの後悔はいやというほどしてきたからもう流石に吹っ切れよう。


「はい!」


「そうか、行くのか……お前程の実力があればもしかしたらこの謎を解き明かしてくれるかもしれないな。

 だが、かなり危険なのにはかわりはない。どんな謎が待ち構えているかわからないいじょう、慎重に進めてくれよな。

 もしもの時はもちろんなりふり構わずすぐに撤退しろ。お前が少しでも情報を持ち帰ってくれた方がありがたいし、なによりお前を失うことが一番の痛手だからな。頼んだぞ」


 うわっ、結構ヤバめの雰囲気だな……


 ところで、俺たちプレイヤーは向こうの現地人からしたらどういう設定になっているのだろうか? 死んでも蘇ることを知ってるのだろうか?


 それとも普通の人として何の隔たりもなく生きてるのだろうか? いや、流石に一緒に冒険に行ってプレイヤーだけが死ぬってこともあるだろうから、やはり何らかの設定はあるのだろう。だとしたら、もっと気楽でもいいと思うんだが……


 これは普通に勘違いされてるだけなのか? 俺もNPCと思われてるのか?


 まぁ、それでも支障ないし、別にいいか。それよりもこの受付の厳つい人、意外とギルドメンバー思いなんだな。俺のことちゃんと心配してくれてる。ちゃんとこの思いに応えて帰ってこないとな。


 じゃあ、いくか。


ーーー三時間後、


 あれ? 洞窟見当たんないぞ? 街から真っ直ぐ西って言ってたのに、全然ないぞ?

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る