第18話 帝王


「お前が相手にしてたのはエンペラーオークだったんだぞ!?」


 はい?


「お前が、キングオーク討伐に向かった直後に、エンペラーオークの発生が確認されたという報告があがってきてな。こっちのギルドの方で討伐隊を大急ぎで編成している所なんだが……見た感じあんまり消耗してないな。キングオークじゃないと判断してすぐに逃げてきたのか?」


「え? いや、普通に倒しましたけど?」


「そうだよな。流石にいくらお前といえど一人でエンペラーオークを倒せるわけ、ん?倒した!? ほ、本当か? おい、ギルドカード見せてみろ」


 え? あいつそんなに強い奴だったの? まあ、結構しぶとかったような気はするが編成隊を組むほどか? まあ、思ったより強くなれてたってことだしいいか。


「ま、まじじゃねーかよ。おい、これ一人で倒したんだよな? キングとエンペラーでは強さの度合いが段違いにあがるんだぞ。うちのギルドは全員一人でキングオークは倒せるが、エンペラーオークを一人で倒せるのはほとんどいねえ。しかも、そいつらは今みんな別の依頼で遠出してていねえから、今いる奴だけで倒そうと編成隊を組んだんだが……」


 そんなにヤバかったのか。まあ勝てたんだし良かったよ。


「まあとりあえずお前が無事で良かったよ。これで晴れてお前も真のギルドメンバーってことだ。よろしく頼むぜ」


「はいっ!」


「だがよー。一人で倒しちまうなんて先輩の面目たたねーな。これならこのギルドで一番になるのもそんなに遠い話じゃねーんじゃねーか? いや、でもうちの上位層は精鋭ぞろいだからな。お前がもっともっと強くなるなら、いつか相手することもあるんじゃねーかな? まあ、これからももっと頑張れ。お前は期待のルーキーだ!」


「あ、ありがとうございます!」


 おーこんな感じで期待されるのも悪くないな。現実ではそんなに取り柄も無かったからな。これからはもっとモンスターを倒すのも悪くないな。まあ、レベルは上がるがステータスは上がらんけどな。


 それにいくつか分かったこともある。一つ目はなぜ、まだ猶予があると思われていたのに、もう集落をオーク達が襲っていたのかだ。それはキングオークがエンペラーオークになって、更に凶暴化した影響なんだろうな。


 あと、称号だな。これでなぜ帝王の討伐者になっていたのかもはっきりした。そういえば効果みて無かったな。


《帝王の討伐者》‥帝王級のモンスターを討伐する。自分よりレベルの低いモンスターは近寄らなくなる代わりに、自分より高いモンスターとの接敵確率上昇。スキル【服従】を獲得。


【服従】‥相手を自分に従えさせる。相手とのレベル差が大きいほど成功率上昇。また、相手が心から屈服していると必ず成功する。

従えた相手は自分の言うことを必ず聞くようになり、自分の経験値の一部を譲渡する。


 流石、帝王といったところか。なかなか強力なスキルだな。称号に関してはまあ無駄な接敵を減らせると考えたらなかなかいい。強い相手は頑張って倒しましょう。逃げるかもしれないが……


 よし、これでやっと正式にギルド登録完了というわけだな。次は何をしようか。俺の目的でもある、絶景探しに行ってもいいが、今回戦ってみて武器が欲しいと感じた。この際、装備一式を揃えてみるのもいいかもしれないな。


 ちょっと待てよ? 装備作ってくれる所ってどこにあるんだ? 鍛治屋さんみたいな所で作ればいいんだよな? まあ、歩いていれば見つかるか。


ーーー三十分後、


「おっ! ここっぽい!」


 なんかぱっと見は普通の家なんだが、奥からカーン! カーン! という音が微かに聴こえてくる。しかもよくこの家の外観を見るとドアのところに鎌が交差したようなマークのようなものがうっすら彫られている。間違いなくここが鍛治屋さんだろう。入ってみよう。


「すみませーん!」


 中に入ってみると、そこは薄暗く蝋燭によってほのかに明かりが確保されているだけの空間だった。


 周りに武器のようなものが飾られている気がするが、暗くてよく見えない。奥に人がいる感じはするのだが、無言で気配も殆ど感じない。取り敢えず、いるの確かだろうし、お願いするだけしてみよう。


「すみません、武器と装備を作って欲しいんですが……」


「ほぅ、わしの姿が見えるか。お主誰の紹介じゃ?」

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