死にたがりが逝く！〜ステータスを振らない男の無双譚〜

第15話 最終日

　やばい、残り一日じゃねーか。まあ、結構死んだとは思うけど、どのくらいなんだ？　次はどの死に方にしようかと思ったけど、そう言えば転落死終わってなかったな。良い武器出来て、忘れてたわ。

　ってなわけで、またあの、懐かしの場所に行かないとな。

　転落死は結構ムズイ。俺の即死無効と、自動回復のせいで死ねないから、飛び降りる前に自傷しないといけないわけなんだが……

　まず、飛び降りている時間が体感三秒くらいか？　結構高いからそのくらいあったと思う。それで、自動回復の間隔が二秒。

　つまり、飛び降りる前にダメージを食らっても意味はないってことになる。飛び降りてる最中にダメージをくらわなければならない。

　むずくね？　めっちゃ風圧かかってくるだろうし。三秒って短いのに落ちながら出来るか？　死因を転落死にしたいから、落ちた後にくらっても意味はないからなー……

　まあ、うだうだ考えてても仕方ない。取り敢えずやってみよう。

「よし、……っ！」

　飛び降りて地面が近づいて来ると思ったら直ぐにナイフを刺す！！

「あ……」

　俺、斬撃障壁も刺突無効も持ってたわ……あーほんとに忘れてたわ。ってか転落死するのむずくね？　どうしようか？　まじで時間ないぞこれ。

　どうにかダメージを入れる方法……俺が無効なのは刺突、斬撃だ。んー刺突、斬撃がダメなら、打撃はどうだ？　打撃ならいけるよな？　自分で殴るのがダメだから、それ以外で……

　んー大きな岩かなんかあればそれに押しつぶされたらいけるか？　でも具体的な方法が思いつかねーな……

「はっ！」

　岩を空中に投げて、それに当たって下に落ちるとかはどうだ？　いけそうじゃね？

　……いやむずそう。でもそれしか方法思いつかねー。やるしかねーな。幸いいい感じのごつめの岩はそこら中にあるからな。

　まずは俺が持てるくらいの岩を見つける。その中でも一番大きいやつだな。両手で抱えられる程の大きさだ。

　それを思いっきり上に投げる。ここで注意しないといけないのが、上に投げた時に、当たる前に俺が落ちちゃうと、どっちも同じスピードで落ちちゃうから、転落死じゃなくて、岩に当たって死ぬことになる。

　だから、上に投げた後に、俺が飛び降りる瞬間に当たるタイミングで飛ぶ！　すると、俺は岩に当たって下に弾かれ、落下速度も上がり、回復前に……逝ける！！

「よっしゃああ！！」

　おっと、嬉しくてつい街で喜んでしまった。死んだのに喜ぶとは何事だろうか。まあいい。人目なんて今更気にするもんじゃない。周回するぞ。

　うん、はっきりさせておいた方がいいだろう。これ、めっちゃ難しい、タイミングシビアすぎて、早すぎると岩に押し潰されて死ぬし、遅いとただ岩の上に落ちて死ぬことすら出来ない。

　そこで、俺はあることを思いついた。取り敢えず上に投げよう。そして……

　いまだ、「【集中】！！」

　そうだ。このスキルは時間をスローにしてくれる。それによってシビアなタイミングも……

余裕でクリアできる！

　なーんてカッコよくいってるけど、これ思いつくまで相当失敗したぞ？　これのおかげでかなり成功率は上がったけど、それでもボヤッとしてたらミスるし、大変だ。

ーーースキル【打撃無効】

　　　スキル【空歩】

　　　スキル【投擲】

　　　スキル【筋力増強】を獲得しました。

【打撃無効】‥打撃を無効にする。

【空歩】‥空中にいる時、一歩踏み出せる。

【投擲】‥物を投げた時、威力、命中に補正。

【筋力増強】‥STRに中補正。

　遂にきた。転落死では死ねなくなった。理由はまさかの打撃無効だったが。

　それにしても、昨日を含め苦労した分だけ、実りが多かったようだ。かなり強力なスキルを手に入れた。

　明日はいよいよキングオークだ。こいつらはいい切り札となるだろう。