第13話 転落死


 街に戻って来た俺は火打ち石を買おうとしたんだが、


「ん? そもそも火打ち石なんてあるのか?」


 某鉱山工作ゲームのせいでそんなイメージがあったんだが、普通にライターとかがあるかもしれない。


 いや、なかった。普通に火打石だった。しかも地味に高い。こちとらゲームスタートから一銭も稼いでない貧乏暗殺者だから危うく破産する所だったぜ……


 まあ、今回は任務だから流石に報酬はもらえるだろう。


「ハァ、ハァ、全力ダッシュは速いけど、気持ち疲れるな」


 疲れないはずなのに疲れる謎現象。まあ、このゲームは脳の中のお話だから錯覚みたいな感じになって混乱してるんだろう。ただスキルの効果で疲れないだけで、普通走ったら疲れるし、息も上がる。


 でも、まあいい運動にはなるな。


「よし、やりますか!」


 早速やる。もう時間は半分を切っている。残りは三日だ。


 早速火打ち石を使ってみる。


「あちっ!! あち、あちっ、あたたたたたたたたたたたたたた!」


 熱い! ってか痛い! うわ死ぬスピード速い!


 死んだ。結構これは効率良いかもな。移動時間がもったいないけど、そんなにかからないから大丈夫だろう。餓死の時よりは効率が良い。ってかかなり良い。


「ってあれ? 服が燃えてない? なんで?」


 なんでだ? 燃やす時服に火をつけたはずなんだが……? 詳細を見てみよう。


旅人のシャツ‥防御力:1

       耐久:∞


「あぁ、そういうことか。耐久無限なのか」


 まあ、確かに装備も買えない初心者がモンスターにやられて裸にでもなったら大変だしな。こっちからしたらだいぶ都合が良い。


 そもそも、モンスターにやられた時とか、龍と戦った時も破れたりしてなかったな。気づいてなかっただけらしい。


 気になることは解決した。では、逝こう。



 そんなこんなで死にまくったら例の如くスキルをゲットした。


ーーースキル【炎熱無効】

   スキル【俊足】

   称号《炎の使い手》を獲得しました。


【炎熱無効】‥火や熱によるダメージ無効。


【俊足】‥ダッシュ時にスピード補正。


《炎の使い手》‥炎で一定以上のダメージを与える。炎によるダメージに補正。


 まずは、うん。炎熱無効とかは予想してた。俊足も途中で手に入ったけど、これのおかげで更に効率が上がった。うん、それは良いんだけど最後のやつはなんだよ。


 ……ダメージ与える相手自分でも良いのかよ! まあ、困った時は火打ち石でどうにか出来るかもだから良いけどさ。


 これを使えば色々称号ゲット出来そうじゃね? いや、でも魔法とかがいるんかな? 魔法どうやって覚えればいいか分からんし、だいぶ先になるな。


 これで一先ず焼死終了! ん? 次はどう死ぬのかって? まあまあ落ち着きなさい。安心したまえ、もうすでに考えてある。では、移動しようか……


「とうっ!」


「……はいっ!! という訳でやってまいりました崖! とてもでかい崖です! 下には奈落の渓谷。落ちたらもう即、死亡ですね! ひゃー! 怖い!!」


 ……うん。言いたいことはわかる。いや、分かっている。分かっているからこそ言わせてくれ、やってみたかったんだと。あの、テレビとか動画でよくやる瞬間移動のやつ! みんなは1度は憧れるよね〜!


 ん? それはお前だけって? ……恥ずいな、死のう。


「では、逝ってきまあーーーーーーす!」


 そうして、おれは奈落の底へと真っ逆さまに落ちていき、死んで


「あっ、俺、即死しねーんだったわ」

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