第12話 準備


 俺は再び森へと戻って来た。訓練の為に死にに来た訳だが、俺はいくつかの死に方が制限されている。とは言ってもまだまだ死に方は沢山ある。そのうちの一つを実践しようと思う。


 その名も餓死だ。俺は今まで死にまくっていたから、気づいていなかったんだが、このゲームには空腹度というものがある。それが四分の一を下回ると行動に制限がかかり、ゼロになって一定時間が経過すると死に至る。


 まあ、何も食べなかったら死ぬのは当たり前だな。


 でも、ただ死ぬのを待つだけでは芸も無いし、なによりも暇だ。それを埋めるために俺がすることは、瞑想である。


 古来より、断食と瞑想はセットで修行としメジャーなものだろう。俺もいよいよ解脱して死の恐怖を乗り切ろうと思う。現実では、お坊さんが餓死するのが良いこととされていたとかなんとかあった気がする。


 俺もちょうど修行僧な訳だし、いい修行方法だろう。ただやはり時間を食うのが問題だから、時間との戦いだな。


 まずは手頃な場所を探そう。雰囲気も大事だからな。イメージにあう、いい感じの岩を見つけた。よし、早速始めるか!


 ……何時間経っただろうか。瞑想をする時は何も考えずに数字をカウントすることで眠気を防ぐことが出来る……らしい。


 確かにお腹が空いて来たきがする。……あっ。


 死んだ。どのくらい経っただろうか。だいたい四時間くらいかな? ゲームだから空腹度の減りがかなり速い気がする。


 この調子ならかなり良い調子で死ねそうだな。早速もどって瞑想だ!


 んーかなり時間は経ったけど、時間効率が悪いな……まあ、一回決めたことだし途中で止めるのもなんか癪なのでやめないがどうしたものか……


 そんなこんなで二日間くらいが経過した。俺はかなり死んだし瞑想もかなりしたから、人間的に成長したかもしれない。瞑想することで、集中力や、共感能力なんかが向上するらしい。


 もう、何度目の餓死かわからなくなった時、


ーーースキル【空腹無効】

   スキル【瞑想】

   スキル【集中】

   スキル【未来予知】を獲得しました。


【空腹無効】‥空腹度が減少しなくなり、疲れなくなる。


【瞑想】‥瞑想をしている間MPを徐々に回復する。


【集中】‥スキル発動時、体感時間を増加させる。


【未来予知】‥相手の次の攻撃の可能性が分かるようになる。



 おーなんかいっぱいゲットしたな。なんか瞑想しすぎて本物の僧に近づいた気分だ。この調子なら悟りを開けるまでは行かないまでも良いお坊さんくらいにはなれるかもしれんな。


 まあ、冗談は置いておいて、これでやっと死ねなくなったわけだ。瞑想したおかげで色々副産物も付いてきた。だが、それだけで悠長にできるほど時間は残されてはいない。


 この修行のせいで時間がかなり潰れてしまった。もう四日もたっている。急いでもっと死ななければ更なるステータスアップは望めないだろう。


 次の死に方は少々場所を選ぶから、この森を離れなければならない。この森と始まりの街以外の場所に行くのは何気に初めてだな。取り敢えず探索に行こう。



 走り回ること数分、空腹無効のおかげで無限に走り続けられるから探索時間の大幅カットに成功している。


「ハァ、ハァ、ハァ、やっと見つけたぜ……砂漠!!」


 そう、砂漠だ! もう、賢い人ならば気づいたかもしれない、俺がわざわざ森から離れた理由、そして、砂漠を探していた理由を!


 俺の次なる死に方はそう! 焼死だ!!


 俺は以前の毒死の際に、沢山のキノコを採取したんだが、その時にカエンキノコなるものを入手している。おそらく、これを食べれば俺の望む結果が出るはずだ!



 ……うん。死んだ。死んだけどもー。なんか火傷状態になって、徐々に徐々に体力を削られて死んだ。


 ……火打石でも買おう。

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