第10話 合格


「なっ……何!? 今、何がおきた? この俺が反応すら出来ずにやられただと?」


 やべ、つい熱くなって思いっきりやってしまった。イケるとは思ってたけど、こんなにあっさり倒せるとは思わなくて、拍子抜けだった。


「お、お前の実力を見誤っていたようだ。すまない、心から謝罪する」


「いえいえその必要はありませんよ。貧弱そうな見た目をしていたのは私ですから。それより、これで合格ということでよろしいですか?」


「おう! もちろんだ! この俺に圧勝したんだ誇っていいぜ、文句なしで合格だ!」


「……っ、ありがとうございます!」


 なんだかんだ余裕だったとはいえ、入れないと思っていたから嬉しいな。これで俺も晴れてギルドの一員だな。しっかり気合い入れて頑張ろう。


「それにしても、お前かなり強かったな。とても凄い師匠のもとで修行でもしてたのか? お前みたいなやつは久々に見たぜ」


「いえ、ずっと一人で修行? 鍛錬? みたいなものをしてましたので特に師匠とかはいませんね」


「そ、そうかー。なら、なおさらすげーな。これからに期待だぜ。よし、なら正式に登録するぞ」


 そして俺達は再び受付に戻ってきた。


「よし、ここに必要事項を書いてくれ。名前と武器だけでいいぞ。あっ、お前は使わないんだったな。なら空欄でいいぞ」


 おぉ、意外と簡単だな。こんなに少なくていいのか? 楽な分には構わんのだが。


「よし、書いたな。ならこのプレートに手を当ててくれ。これでお前の魔力を認識する」


 なるほどこれが個人情報みたいなものか。だから書くことが少なかったんだな。


 プレートに手をのせると、淡く青く光った。


「これで、登録完了だな。これからのお前の活躍に期待してるぞ! ようこそ、暗殺ギルドへ!!」


「……ん、ん? 暗殺ギルド!?」


「ん? どうしたのか? なんか問題か?」


 え!? ここ普通のギルドじゃないの? いや、確かになんかごつい人ばっかりだと思ってはいたけど、暗殺ギルドとは……ってか俺どこで間違えたんだろう?


 いやいやいやそんなこと考えてる場合じゃないぞ。今更違いましたとはいかないだろうし。どうしたものか……この人怒ったら怖そうだしな……まあ仕方ない。やるしかないかー。


「え、いや、何もないですよ? そ、それより暗殺ギルドとはどのような仕事をするのですか?」


「お、そうだな。いまから説明するぞ。暗殺ギルドとは市民にとって危険である、悪党やモンスターを秘密裏に処理することで、皆の生活を陰から支える組織なんだ。そもそも、存在自体が公にされておらず、極限られた人物しか入ることができない。少数精鋭のエリート集団だ」


 お、おう。色々自分で言っちゃうのね……ってか俺はなんでこんな所に迷いこんでしまったんだろう……


 秘密裏に処理するって……そりゃ強くないと務まらないな。まあ合格したんだし、もういっそのこと開き直って思いっきりやりますか!


「よし、早速だが初任務をこなしてもらう。まあ、お前なら余裕かもしれんが、昔からのしきたりで最初の任務は決まっているんだ。それをクリアしたら晴れて一人前としてギルドで任務をこなしていける」


 まじかー。今さっきのテストはスタートラインですらなかったのか。


「わかりました。では、その任務とは……?」


「いいだろう。その任務とは、キングオークの討伐だ」


 は? いやいやいきなり無理ゲーの香りしかしないんだけど。


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