第6話 底で見たもの


「水中に水面? どういうことだ??」


 そう、何度も言うが水中に水面があるのだ。謎い、謎すぎる。暫く固まった後、意を決して水面から出てみることにした。すると……


「うわぁ! あれ? どうなってる? 地面?」


 そこには何故か岩でできた洞窟のような場所だった。


「あれ? 水面は、どこに? あっ、もしかして、上?」


 上を見上げるとそこには水面があった。どういう訳か、水が浮いている。おそらくそこから落ちて来たのだろう。


「せっかくここまで来たんだ。奥に進もう」


 ここは、隠しエリア的な何かなのだろう。強いボスとか出てきたら勝てないけど、まあ死ねるからいいか。


 そうして、ある程度進んだところ、


「うぉ? ここは神殿??」


 そこにはとても綺麗な神殿があった……


ーーー称号《湖底の探索者》

   称号《龍神の加護》を獲得しました。


《湖底の探索者》‥湖の最奥に到達する。自分のHPより大きい攻撃を残りHP1で生き残る。


《龍神の加護》‥湖の神殿に初めて訪れる。獲得しているスキル、称号の効果を増幅。


 称号をゲットしたっぽいけど、今は気にしてられない。そのくらいこの神殿、この場所が美しい。


 心が洗われていくようだ。


 今までで初めてゲームをしてて良かったと感じられた。とても、綺麗で荘厳な雰囲気を纏っている。


 こんなにも素晴らしい場所が他にこのゲームにはあるのだろうか?


 こんなに感動できることがまだあるのだろうか?


 こんなに心動かされることが、あっただろうか?


「まだまだ、俺の人生も捨てたもんじゃねーってことなのか? 死ぬのは何時でも出来るんだから、もうちょっとだけでもやりたいことやってから考えてもいいよな?」


 まさか、これほどまでに心奪われて、また見たい、感動したい、と思っている自分がいるとは思いもしなかった。


 まさか、今の俺にやりたいことが出来るとは思ってもみなかった。



 もう、人生に楽しいことなんて何もないと思ってた。



「よし、まだ見ぬ景色、もっと素晴らしい感動を経験する為に、ゲームを真面目にやりますか!」


 俺が一人密かに決意を新たにしている間、神殿の奥で何かの気配が……


 勿論俺は気付くよしもなく、引き寄せられるように神殿へと歩いていくと、そいつが突如現れた。


 俺がそこで見たものとは……




 一匹の巨大な龍だった。




〈Lv100 龍神リヴァイアサン〉


「は? え? やば、無理無理無理、絶対勝てる訳ない! 折角心を入れ替えてゲームを頑張ろうとしてる矢先に……」


 龍が口を開く。明らかにヤバいものが飛んでくるだろう。ブレスだろうか? もう、諦めてしっかりレベル上げした後にリベンジを果たそう。


「絶対、リベンジしてやるからな!」


 俺はそう言って龍のブレスに直撃して、死に戻った。


 と思ったんだが、


「ん? あれ? 生きてる? HPは? ……減ってない。なんでだ? 確実にあたったよな?」


 そう、俺は生きてた。何故か生きてた。


「はっ、そういえば、なんか称号をゲットしてたな、それの効果か?」


 称号を確認してみると……


「ん? あ! なるほど! 湖底の探索者の効果で俺のカスHPだったら、龍のどんな攻撃でも必ず1残って耐えて、その間に龍神の加護で増幅されたHP自動回復で全回復してるってことか!」


 レベル上げしてなくて、良かった。HPにSP振ってなくて良かったー。


 しかし、俺はこれで事実上、龍の攻撃で死ねなくなった?


「あれ? これもしかして勝てちゃう?」

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