第7話 「ハーフ」月代先生の思い
「……あのね、私は三人姉妹だったんだけれど、あとの二人はイギリス人の母にそっくりで、それはきれいだったの。姉はモデルで、一時有名だったわ。両親は離婚して、母はイギリスに帰ったの。その時、『この子はいらない』と言って、私だけを父におしつけて、姉と妹だけを連れて帰国したのよ」
「ええ、そんなことが!」
「ハーフだと知られると、本当によく『そうは見えない』と言われるわ。凄く一方的な気がしてね。だからお友達には、あまり他言しないで、と頼んでいるのだけれど」
「じゃあ、華乃さんに言われるのも嫌なんですね。そのこと、本人におっしゃいました?」
そう言うと、月代先生は一瞬目を伏せたあと、美しい瞳でじっと私の目を見て、
「言ったわ」
と答えた。
「えー、そうなんですね!私からもう一度頼みましょうか?」
「いいのよ。悪い子じゃないのよね。気になったら自分から念を押すから。あなたってとっても親切なのね!今日はどちらにお帰りになるの?」
月代先生は、一転してほがらかになって言った。
「A市です」
「あら、お隣じゃない。いいところよね。横浜にはかなわないかな?」
「あはは。本当にいいところですよね」
「そうでしょ!私、大好きなの」
車窓から横浜の夜景が見えると、月代先生は今度は少女のように、
「ああ……帰ってきた」
と呟いた。(続く)
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます