第7話 「ハーフ」月代先生の思い

「……あのね、私は三人姉妹だったんだけれど、あとの二人はイギリス人の母にそっくりで、それはきれいだったの。姉はモデルで、一時有名だったわ。両親は離婚して、母はイギリスに帰ったの。その時、『この子はいらない』と言って、私だけを父におしつけて、姉と妹だけを連れて帰国したのよ」

「ええ、そんなことが!」


「ハーフだと知られると、本当によく『そうは見えない』と言われるわ。凄く一方的な気がしてね。だからお友達には、あまり他言しないで、と頼んでいるのだけれど」

「じゃあ、華乃さんに言われるのも嫌なんですね。そのこと、本人におっしゃいました?」


 そう言うと、月代先生は一瞬目を伏せたあと、美しい瞳でじっと私の目を見て、

「言ったわ」

 と答えた。


「えー、そうなんですね!私からもう一度頼みましょうか?」

「いいのよ。悪い子じゃないのよね。気になったら自分から念を押すから。あなたってとっても親切なのね!今日はどちらにお帰りになるの?」

 月代先生は、一転してほがらかになって言った。


「A市です」

「あら、お隣じゃない。いいところよね。横浜にはかなわないかな?」

「あはは。本当にいいところですよね」

「そうでしょ!私、大好きなの」


 車窓から横浜の夜景が見えると、月代先生は今度は少女のように、

「ああ……帰ってきた」

 と呟いた。(続く)




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