第57話


~ハルが異世界召喚されてから1日目~


 居心地が悪い。ユリはここ数日辛い思いをするだろう。しかし、あの地下施設から逃げ出す決心を彼女が自分でしなければならなかった。


 それを手助けするにはきっかけが必要だ。ユリがあの状態からどのようにして決意したのか気になる。だがクロス遺跡の地下に忍び込めそうなスキルや魔法をハルは習得していない為に諦めた。


 救いたい人はいる、助けることのできる物理的な力もあるが、それは今ではない。その人の心の変遷次第となってしまっているのはやはり気分的にモヤモヤする。


 ハルはその気持ちのままサザビーへと向かい、ゴブリン達を撃破する。

 

 アイテムを回収、レベルが1上がった。 



【名 前】 ハル・ミナミノ

【年 齢】 17

【レベル】 20

【HP】  184/184

【MP】  198/198

【SP】  226/226

【筋 力】 152

【耐久力】 167

【魔 力】 198

【抵抗力】 168

【敏 捷】 168

【洞 察】 174

【知 力】 931

【幸 運】 15

【経験値】 2000/5000



・スキル

『K繝励Λ繝ウ』『人体の仕組み』『諠第弌縺ョ讎ょソオ』『自然の摂理』『感性の言語化』『アイテムボックス』『第四階級火属性魔法耐性(中)』『第三階級火属性魔法耐性(強)』『第二階級以下火属性魔法無効化』『第一階級水属性魔法耐性(中)』『槍技・三連突き』『恐怖耐性(強)』『物理攻撃軽減(弱)』『激痛耐性(弱)』『毒耐性(弱)』『受け流し』

 

・魔法習得

  第一階級火属性魔法

   ファイアーボール

   ファイアーウォール

  第二階級火属性魔法

   ファイアーエンブレム

   フレイム

  第四階級火属性魔法

   ヴァーンストライク

   ヴァーンプロテクト 

  第五階級火属性魔法

   フレアバースト


  第一階級水属性魔法

   ウォーター


  第一階級風属性魔法

   ウィンドカッター


  第一階級闇属性魔法

   ブラインド

  

  第一階級光属性魔法

   ──


  無属性魔法

   錬成Ⅱ


 その夜、ハルはルナと合流した。



~ハルが異世界召喚されてから6日目~


 ほぼ7日目に近い6日目の深夜。 


 ハルはユリを宿屋へと返し、魔法を唱える。


「フレアバースト!!!」


 ハルは地下施設を爆発させ、気を失った。


 スタンは宿屋の店主と談笑している最中に、爆発を確認してから塔に到着する。


 地下に降りずとも、地下の様子が窺えた。ハルが倒れている。スタンは視線を送った。塔と海の間は施設の残骸と岩で埋め尽くされている。遠くから見れば崖が抉れてるようにみえているだろう。


 施設の殆どのモノが破壊され消えている。これなら隠蔽は容易い。グレアムは爆発により死亡ということにする。遺体を残さなかったのは正解だった。こんな爆発であれば遺体をどのくらい傷つければ良いかわからない。

 

 ──それよりも……


 スタンはハルを見下ろす。


「コイツは危険だ。この残骸からして…少なくとも第三階級以上の魔法を唱えている……」


 爆発の跡には所々が溶岩のように赤黒く光り、熱を帯びている瓦礫があった。


 スタンは残骸となった地下施設で大の字になって気を失っているハルにゆっくり近付き、首もとに手をかけた。


~ハルが異世界召喚されてから7日目~


 ハルがフレアバーストを唱えて約4時間後。


 馬車に揺られている。ほんの数時間前の出来事だったにもかかわらず、今こうして馬車の揺れに身体をあずけ、鼓動を刻めている。地下施設の出来事がまるで夢を見ていたのではないかと疑いたくなる。


 僕はアレン・ヴィンティミリア


 僕は昔から何でも出来た。


 例えば、絵を描くこと、物語を書くこと、演じること、楽器を弾くことや歌を歌うこと、球技や身体を動かすこと、勉強だって何だって僕は出来た。


 でも全てでNo.1になれたかというとそんなことはない、どれも5位~10位以内だった。


 1位をとったことはなかった。


 順位に拘ったことはない。だって、その年の中で1位でも、1つ上の学年、さらにもう1つ上の学年、ひいてはフルートベール王国、世界にはもっと上の人がいる。


 たかが一学年で1位をとっても上には上がたくさんいるのだ。


 だから5位でも10位でも僕は別に構わなかった。


 それに絵や物語を書いてお金を稼いで生活するつもりなんて毛頭ないのだから……


 まぁなんでもそれなりに出来るから女の子にはモテた。


 家系は魔法士爵という爵位の中では騎士爵と一緒で微妙だけど、僕は次男だから別に平民だとしても可愛い子と結婚できればそれでよかった。


 父上も僕に期待はしていると思うが、兄のそれとは違う。でも期待されないから嫌だとかそんなことはない。


 それに僕は王立魔法高等学校のAクラスに入れたからとても満足している。


 女子は皆可愛いし、男子だってあのスコート・フィッツジェラルド以外は皆良い奴だ。


 僕はアイツの事が嫌いだ。いや、嫌いというか……その…でしゃばり過ぎだし、身の程を知らないというか。


 そう思わない?


 絶対に勝てないレイやハルと張り合おうとするんだよ?

 

 スコートが勝負事に負けて、彼のことをよく知るゼルダはどう思うんだろう?


 彼を見てるとなんだかこっちも恥ずかしくなるんだ。共感性羞恥ってやつが働く。


 やめとけば良いのに。皆に笑われているのに、なぜアイツは目立とうとするのだろうか。一緒にいる僕まで笑われてるみたいでなんだか嫌なんだ。


 馬車が一つ大きく跳ね上がった。外の景色と同様に自分達も浮き上がる。馬車は現在、王都へ向けて走っている。


 本来3泊4日の演習だったが、塔管理者の事故死に伴い1日早く帰ってきている。


 この馬車にスコートはいない。


 ハルがアレックスの膝枕で寝ている。正確に言えば気を失っている。


 スタン先生は魔力を使いすぎたからと言ってたけど、あの威力の爆発は、きっと第二階級やそこらの魔法ではない。いくらスタン先生が爆弾を渡したからといって、崖が抉れる程の威力はでない。おそらく、第三階級以上の魔法を使ったんじゃないだろうかと思えた。


 ハルは平民。しかも孤児だ。彼にそれなりの爵位があれば出世街道まっしぐらなのに……


─────────────────────


 ハルは目を覚ました。アレックスの膝の上だ

。アレックスの隣にはユリがいる。


「あ!?起きた?おはよう」


「おはよう…アレックス。ここどこ?」


 膝の上でハルは訊いた。


「馬車の中だよ?王都に戻るところ」


「そっかぁ…」


 寝ぼけてるハルは再びアレックスの膝に顔を埋める。顔を真っ赤にするアレックス。


 すると、馬車が急停車し、ハルは完全に目を覚ましアレックスの膝の上から離れた。


 魔物が二体現れたようだ。


「もう!邪魔物め!!許すまじ……」


 邪魔と魔物を合わさったちょうど良い単語を放ち、アレックスは物凄い目付きで魔物を睨み付けた。


 ハルが馬車から降りようとすると、


「その必要はなさそうだよ?」


 アレンは窓から外の様子を見て言った。二体の魔物をスコートとレイが討伐しようとしているのが見えた。


 アレンはレイの動きを見ていた。


 ──速い!多分僕よりレベルが5は高いだろうな……


 自分にはあんな動き無理だろうと思い、今度はスコートを見やる。


 ──どうせまだ倒してないんだろ?


 スコートと魔物はまだ睨み合っている。


 ──ほらみろ!


 魔物がスコートに襲いかかる。


 ──…僕ならファイアーボールで様子見して……


 スコートが魔物の攻撃を躱し、ファイアーボールで滅却した。アレンの蓄積されたスコートの情報と些か異なる行動をスコートがとったことに、少々驚いた。


 ──へぇ~、まぁレベル低い魔物だし、そんくらいできるか……


 スコートはなにやら自分の手を見つめ、何かを考え込みながら馬車へと戻った。


 その後、何事もなく王都に着いた。


「お前ら!昨日のことは絶対に口外するなよ!俺はこれから上に報告しにいく!取り敢えず明日また学校に来てくれ!」


 スタンの言葉を聞き、ハルは皆と別れを告げてユリと一緒に、教会へ向かった。


 そういえば、6日目の昼…レベルアップ演習の最中、またも塔内を移動中アレックスと共に転移し、デュラハンと戦い、鑑定Ⅱの巻物(スクロールと呼ばれているらしい)とデュラハンの長剣2本をアイテムボックスに回収した。


 レベルも3上がっている。


【名 前】 ハル・ミナミノ

【年 齢】 17

【レベル】 23

【HP】  208/208

【MP】  227/227

【SP】  255/255

【筋 力】 175

【耐久力】 190

【魔 力】 226

【抵抗力】 191

【敏 捷】 194

【洞 察】 198

【知 力】 931

【幸 運】 15

【経験値】 4000/6000



 教会に入るとシスターグレイシスが迎えてくれた。


「おかえりなさいませ。ハルさん」


 キレイなソプラノの声が教会内に響く。この前の酒焼けした声ではない。


「は…はい」


 ハルは面食らう。


 ──あの酔っ払いシスターがこの綺麗な人だなんて……


「どうかなさいましたか?」


「いえ…それよりもルナさんは?」


「それが……」


 ハルは嫌な予感がした。その直後、


「キャァァァァァァ!!」


 ルナの叫び声が聞こえた。

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