第13話
~ハルが異世界召喚されて4日目~
授業も始まり慌ただしい日常が予想されたのだが、魔法歴史学の授業で、
「この王国は魔法と伴に繁栄した。つまり魔法の歴史を知ることで王国のことだけでなく今後の世界情勢、そして自身の魔法の向上を図れる」
ハルは机の上に両肘を立て、指を組んで先生の話を聞いていた。
──興味深い授業だ。
この世界のことを詳しく教えて貰えそうだと生まれて初めて歴史の授業にわくわくしていた。
──そういえば日本では歴史の授業にわくわくしたことなんてなかったな…どうしてかな?もし、もう一度日本に戻って歴史の授業を受けてる時、自分が異世界から来た異世界人という設定で受けてみたら楽しみながら授業を聞けたのかな?ってそんな中二病みたいなことできるか!!
ゴーン ゴーン
──っておーい!!
気づけば見慣れた路地裏にいた。
「え!?こんなわくわくでも戻るの?また4日まであの日々を過ごすのかよ!」
~ハルが異世界召喚されてから1日目~
<図書館>
フレデリカの元で歴史の授業を受けた。以前、マキノに魔王について聞かれた際にフレデリカに訊いてようと考えたからだ。
彼女曰く魔王は存在していたとのことだ。彼女の見解によるとやはり魔王は魔族の生き残りらしい。
──というかフレデリカ先生の熱が凄い!これはもう勇者と魔王オタクだよ!
フレデリカはその小さな口を目一杯開けて早口でまくし立てる。
「勇者ランスロットは彼しか使えないスキルがあったの!それが雷を自在に操れるスキルでそれを使って多くの者の力になったそうよ!ランスロットは女性だったっていう説もあるの!でも私は男性説に一票かなぁ……それと、ランスロットのパーティーには武術に長けていた獣人がいたらしいの、昔から獣人をパーティーに加えるなんて有り得ないのに。それでも強力な一員にかわりないってことでパーティーに入れたそうよ。カッコいいわよねぇ……」
「どうして獣人をパーティーに加えることはあり得ないの?」
ここで漸く話を遮ることができた。
フレデリカはハルの問いに少し顔を伏せ気味にして答えた。
「それは…何を考えているのかわからないからよ」
図書館をあとにして、いつものお腹がいたくなるまで息を吸って魔力を高める訓練をしてから、剣聖オデッサとは会わずにルナと合流して孤児院に泊まる。
就寝前、リラックスしながら何気無く魔法を唱えると、2つのファイアーボールを同時に出現させることができた。
「あ、できた」
ハルはベッドに座って、両腕を一定間隔離して、ファイアーボールを両方の掌の上で浮遊させている。しかしこれによる喜びで戻ることはなかった。
~ハルが異世界召喚されてから2日目~
またしても王立魔法学校の試験を受けた。2つの的に当ててAクラスに挑戦してみようかと考えたハルだがとりあえずはBクラスで選考していた授業を聞いてからにしようと思い直した。
──興味あるやつはちゃんと聞いてみたいし
アレックスとマリアと友達になるが、カフェには行かず、魔族について図書館で調べてみた。
魔族とは、今から2000年前に滅んだ種族のことだ。時を同じくして滅んだ種族があと2つ。それは妖精族と竜族。その3つの種族がそれぞれ国を築き覇権を争っていた時代があった、その時代を大魔導時代と呼んでいるそうだ。何でもこの三種族の戦士達は第四階級、第五階級魔法を当たり前の様に使いこなし、中には第六階級以上の魔法を扱えた者もいたそうだ。そんな種族達が何故滅んだのか未だ明らかになっていない。諸説ある中で神の怒りに触れたという説が最も有力だ。
現在でも大魔導時代に造られた魔道具や建築物、戦いの跡や魔法の跡が残っているようだ。
──ロマンだ……
昨日よりもお腹が痛くならずに空気を吸うことができた。心なしかファイアーボールの火力が増した気がした。
MPと魔力が1上がる。
~ハルが異世界召喚されてから3日目~
学校のオリエンテーションに参加し、ラースに別れを告げ、教会の仕事をして、マキノのブックアタックを避けてから本を読んだ。
お腹が痛くならずに空気を吸えたがもっと吸える気がした。自分なりの魔力向上の訓練をした。
魔力が1上がった。
~ハルが異世界召喚されてから4日目~
1時限目
<魔法歴史学>
「自身の魔法の向上を図れる……」
──よし!続きを聞かなくては!!
「魔法はこの世界を創造した神ディータが生み出した力とされている。」
──うんうん!ここは本を読んだから知ってる。
この神ディータについても粗方本を読んだつもりだ。おそらく神学の授業で詳しく教えて貰えるだろう。
魔法歴史学は授業初日ということもあり、基本的なところで授業は終わった。
次は第二階級火属性魔法の授業だ。この授業ではAクラスとBクラスの合同で授業を行う。場所は訓練場、日本の学校でいう校庭のような所だ。
「ここだけの話、この授業で第二階級魔法を唱えられた生徒は問答無用でAクラスに編入できるらしいぜ」
ラースがハルに囁く。
「どうしてそんなに小声なんだよ?」
「だって見ろよ?Aクラスの女の子達!皆貴族のスーパー美人のお嬢様達だぜ?あのクラスにいるだけでも幸せじゃねぇか?」
ゲスい顔になるラース。別に涎も出てないのに口元を拭っていた。
「ハル~~!」
「ハルく~ん」
アレックスとマリアが手を振っている。
「アレックス!マリアも元気?」
「うん!元気!」
「なんで私には元気かどうか聞いてくれないの?」
「えっとアレックスは元気そうだから」
「なに?また男勝りとか言いたいわけ?」
グイッとハルの前に顔を近付けるアレックス。
「えっと……」
ハルが返答に困っていると担当の先生が訓練場にやって来た。
「っいよぉ~し!俺はこの授業の担当をするスタン・グレンネイドだ!ちなみにAクラスの担任もしてるぞ!宜しくな!」
危なっかしい名前だ。メガネをかけた熱血短髪髭親父って風貌の教師だった。授業内容の説明をしていると、ラースが小突いてくる。
「ぉぃ!なんであのお嬢様達と知り合いなんだよ?」
「試験中に知り合ったんだ」
ハルも小声で答えた。
「それでは第二階級魔法の説明に入る前に自身のステータスを確認してくれ」
みんな空中を少し前屈みになって自分のステータスを見つめている。
「くそぉ…羨ましいぜ。何がなんでも第二階級魔法を習得してみせる!」
ラースが意気込んだ。
【名 前】 ハル・ミナミノ
【年 齢】 17
【レベル】 1
【HP】 40/40
【MP】 21/21
【SP】 50/50
【筋 力】 9
【耐久力】 25
【魔 力】 14
【抵抗力】 12
【敏 捷】 18
【洞 察】 15
【知 力】 931
【幸 運】 15
【経験値】 0/5
・スキル
『K繝励Λ繝ウ』『莠コ菴薙�莉慕オ�∩』『諠第弌縺ョ讎ょソオ』『閾ェ辟カ縺ョ鞫ら炊』『感性の言語化』『第一階級水属性魔法耐性(中)』『恐怖耐性(中)』『物理攻撃軽減(弱)』『激痛耐性(弱)』
・魔法習得
第一階級火属性魔法
ファイアーボール
第一階級水属性魔法
──
第一階級風属性魔法
──
相変わらずスキルの文字化けが読めない。それよりも、
──どうやったらレベル上がるんだろうか…歴史についてしか図書館で調べていないので今度調べてみるか……
「みんな今一度魔法習得の欄に第一階級火属性魔法が記載されているか調べてくれ、これが記載されていないと第二階級の火属性魔法は唱えられないからな。つまりこの授業を受けても無駄ということだ。記載されていない者はいないか?」
誰も手を挙げない。
「よし、これより第二階級の火属性魔法の授業を始める!」
挨拶がおわると教師のスタンが第二階級魔法を実演してくれた。
「ファイアーエンブレム!」
地面に半径10メートル程の赤い魔法陣が浮かび上がるとその円内に激しい炎が迸る。
ハルがフレデリカの元で練習をしていた魔法だ。
「これから皆にこの魔法をマスターしてもらおうと思う!」
ニカっ!っと笑顔を向けるスタンを見つめる生徒達は口々に呟いた。
「いや…むりっしょ?」
「これが1年で覚えられたら一生食いっぱぐれない人材だろ」
聞こえていたのかスタンは前向きな言葉を送る。
「なに、時間はたっぷりある。お前たちの先輩は無理だったが、お前たちならきっとできる!」
それぞれが散り散りとなり、思い思いにファイアーエンブレムを唱えてみた。
「キャアアアアアア」
アレックスの叫び声が聞こえる。遠くから様子を窺うとアレックスの掌から火が吹き出していた。
「ちょっとこれ止まらないんだけど!!先生止めてぇぇ!」
「お、おい!こっち来んな!落ち着け!おおおおい!!」
生徒が先生を追いかけるなんとも不思議な構図だった。その光景を見て笑ってる者が殆どだが、何人かは面白くなさそうな顔をしている。
Bクラスの貴族連中だ。
アレックスの家系は代々貴族だった訳ではなく、彼女の祖父の代が商人から貴族へと成り上がったのだった。それを知っている貴族社会の住人達、とりわけBクラスの貴族連中はAクラスにいる彼女をよく思っていないのだろう。
「卑しい商人の血が入ってる女め……」
悪態をついているのはハンスだった。彼は確か入学式でもごちゃごちゃ言っていた。
他の生徒達はファイアーボールを出してみたり、ファイアーウォールという火属性の防御魔法を唱えている生徒もいた。ファイアーエンブレムと違って、薄い壁のような炎が地面から沸き立つ魔法だ。
──へぇ~あんなこともできるのか……
ハルはその魔法をよく観察した。
ファイアーウォール、というファイアーボールと同じ第一階級の火属性魔法を見たハルは魔力を掌に貯めてその掌を地面につけた。地面から火の柱をたてるイメージで唱えてみる。
「ファイアーウォール!」
3メートル程の高い火柱が上がり唱えることに成功した。
「よしっ!できた!」
ピコン
火属性第一階級魔法
『ファイアーウォール』を習得しました。
それを見たマリアは驚きながら言った。
「ハルくん…すごい……」
「えへへ、いやぁ~それほどでもぉ」
ゴーンゴーン
路地裏に戻ってしまった。
──これは…新しい魔法を習得したから戻ったのか?それともマリアに褒められたから戻ったのか?フレデリカに魔法を3属性唱えられることを褒められた時よりも何故だか嬉しかった。きっと実際の魔法を見て褒めてくれたからなのかもしれない。
顎に手を当てて黙考していると、
「オイ!」
──やべっ!コイツらのこと忘れてた…でも待てよ?折角、魔法を覚えたんだからもうコイツらに勝てるんじゃないのか?
「お前!何へらへらしてやがる!痛い目に合いたくないなら金だしな!」
「うげぇ照れてるところを見られたのか……恥ずかし……」
恥ずかしいところを見られたプラスあの時ボコボコにされた恨みをはらそうと決めたハルはファイアーボールを不良の一人にお見舞いした。火球は真っ直ぐ背の高い方の不良に当たる。
「うわぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"」
小さな炎は不良の着ているボロボロの衣服に燃え広がったかと思えば、一瞬にして内側の肉を焼く。
「おい!魔法かよ!汚ねぇぞ!!」
「二人がかりのほうが汚いだろ!」
ハルは非難してきた小さい方の不良に掌を向けた。
「ひぃぃぃ!!」
「ファイアーボール!」
不良はファイアーボールを目で追うので精一杯のようだった。顎を引いて胸部にファイアーボールが当たるのを怯えながら見ていたが、
「ぐわぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"」
背の高い方と同様にして火だるまとなる。
ハルは恨みを晴らしてスッキリした。かと思ったがあまりにも燃えすぎている不良達のことが心配になってきた。
叫び声が聞こえなくなった。
「ぇ……やばくね?」
炎を振り払おうと必死にもがいていた2人だが、そのうち身体が硬直し、地面に倒れ、石炭のように黒くなっていった。
その時、
「大丈夫か!!?」
どこからか大人の声が聞こえる。
ピコン
レベルが上がりました。
ハルの頭の中で声が聞こえた。
ゴーン ゴーン
──あ、戻った……
先程までと同じ路地裏なのだが、後ろを振り向くと不良達は二人そろって少し遠くに立っていた。これから、ハルに声をかけようとしている。
「オイ!」
ハルは後ろを振り返らずに走り去った。
【名 前】 ハル・ミナミノ
【年 齢】 17
【レベル】 4
【HP】 61/61
【MP】 45/45
【SP】 80/80
【筋 力】 27
【耐久力】 46
【魔 力】 35
【抵抗力】 33
【敏 捷】 42
【洞 察】 39
【知 力】 931
【幸 運】 15
【経験値】 270/500
・スキル
『K繝励Λ繝ウ』『莠コ菴薙�莉慕オ�∩』『諠第弌縺ョ讎ょソオ』『閾ェ辟カ縺ョ鞫ら炊』『感性の言語化』『第一階級水属性魔法耐性(中)』『恐怖耐性(中)』『物理攻撃軽減(弱)』『激痛耐性(弱)』
・魔法習得
第一階級火属性魔法
ファイアーボール
ファイアーウォール
第一階級水属性魔法
──
第一階級風属性魔法
──
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