第90話 内訳


「まずは商品となる物資を輸送するトラックが五台。全車両チタン合金の装甲と八輪タイヤだ。それとは別に彼等の食料や弾薬、燃料を運ぶトラックが二台。こっちもチタン合金の車両と六輪のタイヤだ」


 デビスは護衛対象である行商隊の輸送トラックの内訳を説明してくる。


「なんで装甲とタイヤまで説明しているんですか?」

「あー……坊主は護衛依頼初めてか? 装甲の有無やドライブの種類でポジションやどの車にスピード合わせるかとか決めるんだと思ってくれ」


 ミオンはゴールデンバックのメンバーに質問したが、たまたまドミノと言う雪豹チームの一人であるサイチョーがミオンの質問が聞こえたのか答えてくれる。


「ありがとうございます」

「いいってことよ」

「続けていいか? 私兵部隊は六輪式装甲車一台と武装雪上車が二台だ。ここまで聞けばわかると思うが、今回の行商隊は大所帯だ。最低でも商人と私兵合わせて二十人はいる」


 ミオンが礼を述べるとサイチョーはニカッと笑う。デビスが軽く咳払いして説明を再開する。


「何度もすいません。事前に人数ってわからないんですか?」

「行商隊が運ぶ商品には人が含まれる場合もあるし、車を持たない雪豹や市民が金を払って同乗して次の目的地である集落や都市に移動する場合もあるし、道中の襲撃などで死ぬ場合もある」


 ミオンが恐る恐る手を上げて質問すると、デビスが人数が増減する理由を答える。


「私兵部隊の練度は?」

「年二回、都市の外で演習する程度だ。彼等は一年の大半を雇い主が経営する店や、売り物が保管してある倉庫を警備しているだけだ。所持している車両や装備の質は高いかも知れないが、実戦経験は素人よりまし程度だろう。そのおかげで我々に仕事が回ってくるのだから、感謝しろとは言わんが、馬鹿にしたりして問題起こすなよ」


 続いてリキッドが手を上げて行商隊の私兵部隊の練度について聞く。

 デビスは手元の資料を見ながら私兵部隊の練度がどの程度か説明すると最後にトラブルを起こすなと釘をさす。


「へっ、雇い主はそこらへんを分かってるかもしれんが、その私兵様はそうだとは限らないだろ?  いざ現場に出たはいいが、上官気取りで俺達の行動をアレコレ口出しされたんじゃ堪ったもんじゃないぞ」


 釘をさしてきたデビスにドミノのガンナーと名乗った男が小ばかにするように茶々を入れる。


「ガンナー、お前の意見もわかる。だが今回の雇い主は全面的に此方の行動に合わせてくれると言っている。戦闘や護衛に関しての全面的な指揮権は俺達フロストシティの雪豹にあると言う事だ。件の私兵も俺達の指揮に従うそうだ」


 ガンナーのチャチャに対してデビスはにやりと笑うと、手元の資料から一枚の紙きれを参加者全員に見せる。

 紙切れには今回の依頼内容が書かれており、全権を委任すると明記され依頼人と思われる人物のサインと雪豹ギルドの承認印が押された委託証だった。


「今回の依頼人は随分と太っ腹だな」


 委託証を確認すると会議室にいた雪豹たちがざわついた。

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