第88話 顔合わせ


「指名依頼を受けるなんてミオンも有名になってきたな」

「たまたま車もっていたからですよ」


 ドラゴンエッグのトレーラーハウスエリアでミオンはターカー達と談笑する。

 業態の護衛依頼を引き受けたことをターカー達に話すと、ターカー、アリス、リディ、イザベラ、リンの五人がミオンのチームとして護衛依頼に同行することを申し出た。


「ミニガン取り付ける時に内装見せてもらったけど、ほんま贅沢やな」


 リンかぐるりと内装を見てため息をつく。

 ドラゴンエッグは二階が居住エリアになっており、100インチのムービー・スクリーンを搭載、巨大な冷蔵庫のついたキッチン、ユニットバスも搭載しておりステレオ設備にジャグジー機能付き。循環装置も搭載しており最大一ヵ月の連続使用に耐えられるとスペック表には明記されている。

 6人迄なら快適に過ごすことができ、プライベートスペースがなくなることに目をつぶれば最大10人まで過ごすことができる。


「本来の発注者の人はだいぶ内装に拘ったんだろうね。でも、こういった護衛依頼やる時にこの車あったら野営はかなり快適でしょうね」

「護衛依頼で都市や集落以外の場所で野営する際は狭い車内でお互い身体を寄せ合っての車中泊とかが基本ですからね。横になって寝れるだけでも贅沢なのに、お風呂とトイレがあるって最高ですよ」


 リディもリンに釣られるように内装を見て呟き、同意するようにイザベラはうんうんと何度も首を振る。


 リディ達がドラゴンエッグの内装を褒めるのも理由がある。

 護衛、探索、賞金首の捜索などで雪豹たちが車両に搭乗して野外活動をする際、野営はある意味命がけである。

 車両や防寒具のサーマルエナジーの残量が少なければ寝ている間に暖房が切れて凍死する。


 トイレ事情も洒落にならない。氷点下マイナス30度まで行く極寒の外の世界で排泄の為に防寒具を脱ぐわけにはいかないので、トイレは事前に装着したオムツの中か、暖かい車内で周囲に気を使いながら携帯トイレで済ませないといけない。


 無論風呂など皆無と言ってもいい。そういった諸々の問題をミオンが所有するドラゴンエッグは一括で解決してくれるのである。


「今はナビィはんに運転任せてるけど、牽引車もなかなかやで。スペースも広いから圧迫感ないし、何よりもシートが最高や! 長時間の運転対応したデラックスシートは全身のコリをほぐすマッサージ機能に高級素材のクッションにシートレザー。車高が高すぎるけど、それを補うように車体カメラがいくつかつけられて車内のモニターから360度周囲を確認することができるで」


リンはまるでマシンガンのように牽引車の凄さを説明する。


「せや、ナビィはん! うちが取り付けたミニガンはどないや?」

『不具合は見当たりません。模擬プラスチック弾の連続射撃時の車両バランスのぶれも最小限に抑えられています。完璧と言って問題ないでしょう」


 リンはふと思い出したように、モルグで見つけて取り付けたミニガンの調子をナビィに聞く。

 ナビィが問題ないと答えるとどうだと自慢するように胸を張った。


『マスター、雪豹ギルドに到着しました。おそらく同じ護衛依頼を受けたと思われる雪豹チームの車両も数台停まっております」


 行商隊の護衛依頼を受けた他の雪豹チームとの顔合わせの為に雪豹ギルドに呼ばれたミオンは雪豹ギルドの駐車場に辿り着く。


 トレーラーから降りて駐車場を見回すと、戦車や八輪式の装甲車、銃座や装甲を張り付けたトラックが停車していた。

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