第87話 護衛依頼


「行商隊の護衛ですか?」


 レギュラーバトルに参加した翌日、ミオンは雪豹ギルドに呼び出されていた。

 もうすぐフロストシティに来る行商の護衛依頼を受けてくれないかというのが呼び出しの理由だった。


 各都市の流通を司る行商隊がおり、もうすぐフロストシティに辿り着くので、フロストシティから次の都市までの護衛として雪豹を募集する旨の連絡が届いたという。


「ええっと、前の都市で護衛を受けた雪豹チームがそのまま続けた方がよくありません?」

「昔はそうだったんですけど、武器弾薬の消耗、疲労の蓄積、行商隊のスケジュールによっては自由時間が少なかったりと色々問題が発生しましてね………」


 ミオンは同じ護衛部隊がずっとついていた方がいいのではと言うが、ギルド職員が言うには色々問題があって同じ雪豹チームで護衛を続けるのはよくない風潮になっていると伝える。


「今では都市別で依頼を受けた雪豹チームは次の都市までの護衛を引き受け、無事に隊商を都市へ送り届けると、その都市の雪豹ギルドに所属する雪豹チームと交代する。ようするに、リレー方式で行商隊を守る手筈となっております」

「でも、なんで僕にその護衛依頼が? Gランクですよ、僕」


 護衛依頼を都市ごとで受ける理由は納得したが、なぜ自分にお鉢が回ってくるのかまでは理解も納得も行かなかっため、ミオンは職員に質問する。



「本来はミオン様にはお話は行く予定ではなかったのですが……護衛を受ける予定だった雪豹チームの一つが賞金首ミュータント討伐中に車両を大破させてしまい、護衛依頼を遂行できない状況になりまして……ミオン様は先日車両を購入しておりますよね?」


 ギルド職員は苦笑して、小声でミオンに依頼が回ってきた理由を伝える。

 本来行商隊を護衛するはずだった雪豹チームの車両が大破し、修理中らしく、このままだと人数不足で護衛依頼を遂行できないらしい。


 このままだと違約金や場合によっては代わりの護衛が見つかるまで行商隊は足止めされ、荷物の配送遅延の損害金に宿泊費その他諸々の経費を雪豹ギルドが補填しないといけないらしい。


 困り果てたギルドはミオンがドラゴンエッグと言う大型トレーラーを購入しており、最低限の武装をしていることを知ると、今回代役として護衛を受けてくれないかと打診してきたのだった。


「ええっと、護衛は僕だけじゃないですよね? 護衛のノウハウとかよくわかりませんし」

「もちろんです。都市の外の雪原は死が隣りあわせです。行商隊も可能な限り最高の戦力を雇いたいと思い、我々雪豹ギルドも提示された金額で雇える最強戦力を集める義務がありますので、いくつかの雪豹チームと合同になります。事前に集めたチームにはメンバー変更を知らせております。どうでしょう、受けてもらえないでしょうか?」


 さすがに自分一人で行商隊の護衛をしろと言う依頼だったら断ろうと思ったが、ギルド職員は慌てて今回の依頼が複数の雪豹チームによる合同依頼であることを伝えてくる。


「……まだGランクの若輩者ですが、精いっぱい頑張らさせてもらいたいと思います」

「引き受けてくれてありがとうございます。これで肩の荷が下りました」


 ミオンはしばらく考えた後、依頼を引き受けることを承諾する。

 ミオンが引き受けると言った瞬間、ギルド職員はほっと一息ついて、凝った肩を叩いてほぐしていた。

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