第86話 試合後


「やあ、お疲れ様! いい試合だったよ」


 試合終了後、機体から降りるとマッチメーカーのジョンが機嫌よさそうに声をかけてくる。


「よう、おつかれさんっ!」

「ミオン君~、お疲れ様」


 遅れてターカーとアリスがねぎらいの言葉をかけてくる。


「あれ、他の皆は?」

「ああ、リディ達ならほら、あそこだ」


 ミオンは残りのメンバーは何処だとターカーに聞くと、ターカーは通路の奥を指差す。

 ミオンが通路に視線に向けると通路の曲がり角からこちらを覗き込んでたリディ達が慌てて隠れる。


「???」

「ターカーがさぁ~、ミオン君が試合に勝ったら一緒にお風呂入るっていったでしょ~? それ意識してるみたいなの~」


 リディ達の反応にミオンは自分が何かしたかなと小首をかしげていると、アリスがリディ達がなぜ恥ずかしがっているか教える。


「もう、ターカーさんいきなりあんなこと言わないでくださいよ! 恥ずかしかったし、対戦相手の人いきなり怒り出すし……」

「あははは、いいじゃねえかよ。ご褒美あった方が頑張れるだろ?」


 ミオンが抗議すると、ターカーは笑いながらミオンの背中を叩き悪びれた様子もなく言う。


「くそう……これ見よがしにイチャイチャしやがってぇぇ! 憎しみだけで人が殺せたらあああ」

「うっ……うわああああ!?」


 いつの間にかミオンの後ろにマガミが忍び寄り、憎しみに満ちた声を漏らす。

 ミオンは思わず悲鳴を上げて飛びのき、ターカーとアリスがミオンを護る様に前に出ると、ミオンの悲鳴を聞いてリディ達も慌てて駆け寄ってくる。


「ミオンの対戦相手だった人だな。うちのミオンになんか用か?」

「いやまあ……用というほどじゃねえけど……挨拶と忠告をな」


 ターカーが殺気を込めて声をかけると、マガミは腰が引けた態度で返事をする。


「忠告?」

「ああ、ある意味バトルリングの代名詞みたいなものでな……外でゴロツキがたむろしてると思うから、武器持ってるなら抜いとけ。ないなら今回のファイトマネーで護衛を雇えって伝えようとしたんだが……」


 マガミが言うには勝った選手からファイトマネーを奪う為に、賭けに負けた客が八つ当たりにバトルリングパイロットを襲撃することが多いという。


「警備の人とか動かないの?」

「その警備が小遣い稼ぎにゴロツキから賄賂を貰ったり、自分達を護衛として雇わせようとしたり、最悪の場合警備とゴロツキがグルになってカツアゲしてたりする」


 ミオンが警備員とかが動かないのかと聞くと、マガミはため息をつきながら警備員がグルだったりすると答える。


「……ちょっと問題になっているんだが、なかなか解決できなくてねぇ」


 マッチメーカーのジョンも知っていることなのかお手上げのジェスチャーをしながら解決策が出ていないと答える。


「ミオンの場合、会場でのお風呂宣言で女の取り巻きもいるってわかったから、女狙いで襲ってくるやついるかもしれないぞ」

「あたいらゴールデン・バックに喧嘩を売る気概のあるやつがいるならお目にかかりたいね」


 マガミはさらにミオンの仲間のターカー達も狙われる可能性もあると伝えると、ターカーは拳の関節をボキボキ鳴らしながら獰猛な笑みを浮かべる。


「え? ゴールデン・バック? あの女性だけの雪豹チームの?」

「いや、男性メンバーもいるよ」

「え? マジ? 加入条件は? 俺なんでもするし! 周りからは一途で情熱的だって言われています!」


 ゴールデン・バックには男性メンバーもいるとミオンが伝えるとマガミは急にテンションが上がり、ターカー達に自己紹介を始める。


「ハーレム作るのが夢なのに一途なの?」


 ミオンはマガミの自己紹介を聞きながら疑問を口にしていた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る