第83話 マッチメーカー
『イラッシャイマセー、ザ・カウントニナンノヨウダ?』
「えーっと、預けていたメタルライドの受け取りに」
翌日、ミオンはリペアショップ【ザ・カウント】に顔を出す。
今回も独自のイントネーションで喋るロボットが応対に来て来店目的を聞いてくるので、ミオンは修理に出した時の預かり証を提示する。
『カクニントレタゾ。オーナーヨンデクルカラ、テキトウナモンノンデクツロイデクレ』
預かり証を見たロボットはマニュピュレーターを伸ばしてフリードリンクコーナーを指差すと、キュラキュラとキャタピラの音を鳴らしてオーナーを呼びに行く。
「おう、またせたな」
ミオンがコーヒーを飲みながら時間を潰しているとオーナーであるホーニーが小太りな茶髪の中年男性を連れてやってくる。
「やあ、君があの機体のパイロットかい? 君、バトルリングに興味ないかい?」
「おいっ!」
ホーニーが連れてきた男性はホーニーが紹介する前にミオンに声をかけて、電子名刺を見せる。
ホーニーが不愉快そうに声をかけるが中年男性は気にした様子もなくミオンにバトルリングに興味ないか聞いてくる。
「マッチメイカーのジョン・リードさんですか」
「レギュラーバトルの選手が足りなくてね。スカウトを兼ねてあちこち見回っていたら知り合いのホーニーの店にメタルライドの修理が持ち込まれたって小耳にはさんでね」
「すまねえな、ちょっとこいつには借りがって……料金負けるから話だけでも聞いてくれないか?」
ミオンが名刺を確認すると、小太りの中年の名前はジョン・リード、職業はバトルリンクのマッチメイカーと表示されていた。
ホーニーは苦笑しながらミオンに話を聞いてくれと頭を下げる。
「ええっと、僕操縦できると言っても土木作業や荷物運びぐらいで、レギュラーバトルとかは未経験なんですけど」
「未経験? それは渡りに船ってやつだね。最近新人戦の層が薄くなってきててね。君、試しにレギュラーバトル出てみないか? ファイトマネーは勝っても負けても必ず支払う。勝利した場合は掛け金の1割が追加で支払われるし、ある程度だが修理費とパイロットのケガの治療費も出すよ」
ミオンがバトルリングに出たことがないというと、ジョンはそういう人材を探していたのか、更に押してくる。
「それだったら有名な人で試合組んだ方が……以前聞いたパペットマスターさんでしたっけ? そういう人とか」
「打診したけど、ファイトマネーの折り合いがつかなかったり、別都市が破格な値段で引き抜いたりして集まらなかったんだ」
ミオンは無名な選手を集めるより花形を呼んだ方が良くないかと提案するが、ジョンは行動した後だと答える。
「僕強くないと思いますよ?」
「試合に勝ってほしいんじゃなくて、出てほしいんだ。最近マッチメイクがマンネリ化してきね……客からマンネリ化の不満や収益の低下の兆候が見えていてね、新しい風が欲しいんだ! 一試合だけでもお試しで出てくれないかな?」
ミオンはあまりに乗り気じゃない様子にジョンは両手で拝み倒すように内情を晒し、一試合だけでも出てくれないかと言ってくる。
「……一試合だけですよ、速攻で負けても文句言わないでくださいね」
「助かるよっ! 都合のいい日教えてくれるかな」
ミオンは情にほだされたのか根負けしたのか、試合に出ることを承諾する。
ジョンはミオンの両手を握ると激しく上下に振って感謝の言葉を述べた。
「巻き込んじまって悪いな……」
ホーニーが申し訳なさそうに謝罪した。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます