第79話 リン・スズキ
(あかーん! 欲張って奥まで行ってもうたああ!!)
雪豹兼スカルハンターのリン・スズキは都市防衛陸軍物資集積所の中を逃げ回っていた。
リンはいつものようにモルグに潜ってゴミ山から使える電子部品などを回収していた。
今日は不作で、このままだと赤字になると思ったリンは、いつもなら近寄らないエリアまでつい足を踏み入れてしまった。
そのエリアはあまり手が入っていなかったのか、価値のある物がたくさんあり、夢中でジャンク品を拾い集め、獲物を求めて隠れていたグールに気づかなかった。
隙を見て逃げ出したのはいいが、不慣れな場所とグールたちが先回りすることで追い詰められていった。
最後の手段として悲鳴を上げながらがむしゃらに走り回った。
もしかしたら歩哨に立ってた軍人がパトロールしているかも、もしかしたらお人よしなスカルハンターが助けてくれるかもとわずかな希望を乗せてリンは叫びながら走り続けた。
「あんたら助けてっ! こいつらグールやでっ!!」
「グール?」
「わかりやすく言うと、スカルハンターが手に入れた剥ぎ取り品を襲って奪い取る人たちのことをグールって言うのよ」
自分の叫び声を聞いていたのか銃を抜いて待ち構えていたミオン達にリンは助けを求める。
追いついたグールたちもミオン達に一瞬身構えるが、相手が女性であることと、自分達の方が人数が多いからいけると思ったのか、皮算用を始める。
グールの一人がターカーに罵声を浴びせた瞬間、惨劇が始まった。
ターカーをミュータント化したゴリラと例えたグールがターカーに殴られる。
殴られたグールの男はケヒュっと空気が漏れたような悲鳴を上げて首が一回転半した。
残りのグールもリンも何が起こったかわからず、呆然としていた。
その後は次々とグールがターカーに一方的に殺されていく。
グールたちも反撃しようとしたり逃げようとするが、まるで屠殺場で家畜を処理していくように返り血を浴びながら笑みを浮かべたターカーに次々と殴り殺されていった。
「えっ、えーっと……助けて……くれたって思ってええんやろか?」
リンは何時でも逃げれるように身構えて恐る恐るミオン達に声をかける。
「そだよ~。君は現役のスカルハンターさんだよね~? ヴィーグル用の搭載火器とかいい部品が残る場所とか知らない~? 命助けたんだから~、案内ぐらいしてくれるよねえ~?」
「もっ、もろち……やなかった、もちろんやで! うちは恩はすぐに返す主義やねん!(あかん! 逆らったらやられる!!)」
リンが声をかけた瞬間、アリスがリンの肩をがしっと掴み、笑みを浮かべたまま案内を頼んでくる。
リンはアリスの笑顔を見た瞬間に力の差を察したのか、ひきつった笑みを浮かべて案内を承諾する。
「うちはリン・スズキ。Gランクの雪豹兼スカルハンターやってる。得意なのはメカニックで、修理や組み立てやな」
「あたい達はゴールデン・バック所属の雪豹。あたいはターカー、こいつがアリス、後ろにいるのがリディ、イザベラとミオンだ」
「えっ!? その子男の子や思ってたけど、女やったん!?」
リンはゴールデンバックと言う雪豹チームは女性しかいないチームだと思いおんでおり、ミオンを紹介すると女性と勘違いした。
「ボークーは男でーすー!!」
物資集積所にミオンの抗議の叫びが響いた。
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