第78話 出会い
都市防衛陸軍物資集積所内は乱雑に積み上げられた廃材の山脈のようだった。
保管方法も雑で野ざらしの部分が錆びていたり、雪に埋もれていたりしていた。
「僕たち以外にもそれなりにいますね」
「ちなみにここ専門で雪堀とかする人のことを
廃材の山を見ていると雪を掻きだして廃材を解体して使える部品を取り出している人達がいる。
ミオンがその人たちを見ているとリディが集積所専門でジャンク品を掘り当てる人をスカルハンターと呼ばれていると教えてくる。
「ここと外で雪堀するのとどっちがいいんだろう?」
「入場料と持ち出し料払えるなら断然モルグですね。なにせ埋まっているか、埋まっていないかもしれない場所を掘るより、廃材の上に雪が積もっているだけのここの方が確実ですし」
ミオンがさりげなく呟くと、呟きが聞こえていたイザベラが答える。
「おしゃべりしてないで、さっさと行くよ。ミオン、良いの見つけてくれよ」
「僕よくわからないんですけど……」
リディとイザベラと喋っているとターカーがパンパンと手を叩いて先に進むように促してくる。
言い掘り出しもの見つけてくれと言われるとミオンは苦笑しながら知識がないと答えるが、ゴールデン・バックの面々は密かにミオンの幸運に期待していた。
物資集積所奥地にあるヴィーグルエリアに辿り着くとほとんど人がいない。
大破した車両や降り積もった雪の重さで瓦礫の山が崩れていたりとちょっとした迷路になっていた。
「ここは……人がいないですねえ」
「ヴィーグルのスクラップとなると専門の機材とかないと解体できないし、搭載火器も場合によっては暴発する可能性もあるからね。逆を言えば専門の機材と知識と輸送手段があれば十二分にリターンを得られる。噂話だけど、ここの廃材だけでメタルライド一機作り上げたなんて言うのもあるわ」
ミオンが人がいないことを口にすればリディが人が少ない理由を述べる。
「他にも———」
「キャアアアアアア!!!」
「悲鳴っ!?」
リディが更にうんちくを述べようとすると、どこからともなく女性の悲鳴が聞こえ、ターカー達はミオンを護る様に動くと銃を構える。
「こっちくんなやっ! ボケエエエエエ!!」
「待ちなよスカルハンターちゃ~ん! 剥ぎ取り品とお金置いていったら許してあげるよ~!」
廃材を飛び越えて油まみれの防寒具を付けた女性がミオン達の方に走ってくる。
その後ろからは8人ぐらいの男性が鉄パイプやナイフを持って女性を追いかけていた。
「あんたら助けてっ! こいつらグールやでっ!!」
「グール?」
「わかりやすく言うと、スカルハンターが手に入れた剥ぎ取り品を襲って奪い取る人たちのことをグールって言うのよ」
追いかけられていた女性は早く逃げろと必死にジェスチャーで伝えてくる。
ミオンが聞きなれない単語を聞き返すとリディがグールについて答える。
ゴールデン・バックの面々は焦った様子もなく臨戦態勢をとっていた。
「おいおい、これはまた上玉じゃねえかよ」
「今日はついてるな」
「男と……あのゴリラがミュータント化したようなマッチョは殺せ! あとは楽しんだ後に身代金とるか、場末の売春宿に売っちまえ」
「あの男の子を女装させたら……イケるっ!」
グールと呼ばれていた集団がミオン達に気づくと下品な感想を返す。
ミオンは特に一番最後の発言をした男に恐怖を感じていた。
「あちゃ~……ミオンく~ん、ちょーっと後ろ下がろうか~」
「え?」
「いいから早くっ! 巻き込まれても知らないわよ!」
「そちらのお姉さんも死にたくなかったら早くこっちに!」
ターカーを除いたゴールデンバックの面々はミオンを後方に下がらせようとする。
イザベラは追いかけられていたトゥームレイダーの女性に必死に手招きして避難するように促していた。
「……コロス」
ゴリラがミュータント化したようなとグールに言われたターカーはプチンと何かがキレる音がしたかと思うと銃低音な声で笑みを浮かべながら殺すと呟く。
(目が笑っていないというか……笑顔が怖い!!)
たまたまターカーの表情が見えたミオンは絶対にターカーを怒らせないと心に誓った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます