第77話 モルグ


 ドラゴンエッグの搭載火器を求めてミオンとターカー、アリス、リディ、イザベラのゴールデンバックの面々が件のモルグへと向かう。


「あの~、モルグって何です?」

「正式名称は都市防衛陸軍物資集積所、雪豹や近隣の住民はモルグって呼んでるけどな」


 ヤポンスキーに用意してもらったトラックで件のモルグに向かう途中、ミオンはモルグについて質問すると、ターカーが答える。


「えっ!? 都市防衛軍の所に行くんですか!?」


 都市防衛軍とは最新鋭の装備と練度を持つ軍隊で、都市を襲うミュータントや暴走した警備ロボット、その他都市の危機に対応する治安部隊の名称だ。

 その都市防衛軍の物資集積所に向かうと聞いてミオンは青い顔になる。


「そんなに心配しなくても大丈夫よ~」

「本当ですかぁ?」


 青い顔のミオンの頬を突きながらくすくすと笑うアリス。

 リディもイザベラもモルグの正体を知っているのかにやにやと笑いながらミオンのリアクションを楽しんでいる。


「見えてきたぞ」


 ターカーが運転するトラックが辿り着いたのは、フロストシティ外周部に近いエリアだった。

 そこは長大な有刺鉄線のフェンスに囲まれた機械部品と思わしき残骸がコンテナに詰められたりむき出しのまま放置されていたりと、物資集積所と言うよりゴミ集積所と言う名称の方がふさわしいかもしれない場所だった。


 ゲート入り口には、安普請と言っていい詰め所と防寒具と頭部全体を覆うヘルメットを装備した歩哨がいなければまさしくゴミ集積所だとミオンは勘違いしただろう。


「所属と目的を述べよ」

「雪豹チームゴールデンバック、目的は廃品回収」


 ターカーは自分の雪豹ギルド免許許の下に紙幣の束を忍ばせて、歩哨の一人に渡す。


「そういえば、そういう報告を聞いていたな。手続きをする、全員下車して詰め所に来い」


 ギルド免許の下に忍ばせた紙幣をポケットに入れた歩哨は手続きをするようにとミオン達一行を促す。


「ええっと……」

「気にするな。ミオンのおかげでヴァルプルギス・ナイト・マーケットモールと大口契約できたからな。奢りだよ、奢り」


 ミオンがおろおろした様子で財布を出そうとするとターカーは笑いながらしまっとけとジェスチャーする。

 詰め所での手続きは入場の登録と、中で見つけた物資を持出す前の認証。中で事故があっても陸軍に責任を求めないこと。

 この3つを理解して守ってくれれば中でなにを探そうと好きにしてくれていいと歩哨たちが言うとゲートを解放し、ミオン達を見送る。


「ええっと……ここ軍の物資集積所なんですよ……ね?」

「間違ってないよ、ミオン。ここは都市防衛軍が撃破した警備ロボット、軍の大破したヴィーグルの破損品を選別する保留所。入場料と持ち出し品によっては追加料金払うことで物資の横流しがされてるのさ」


 ミオンは不安げにゲートを通り抜けながらゴールデン・バックの面々に声をかけると、そういった横流しが行われている場所だとリディが答える。


「え? そんなことしていいの?」

「本当は駄目なんですけど、最近防衛軍の中でも派閥争いとかがありまして、明記できない活動予算確保のために暗黙の了解的な、目こぼしがあるんですよ」


 群が横流しなんてとミオンが驚いていると、今度はイザベラがなぜ横流しが行われているかミオンに教える。


「さて、ドラゴンエッグに搭載できそうな比較的マシな武器探すぞ」


 ターカーはそう言って大破した戦闘車両が数多く放置されているエリアを指差した。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る