第75話 オートプロテクター”ワイルドギア”


「実は当商会で新商品として売ろうとしているオートプロテクターがありましてね。ミオン君、先行モデルを買いませんか?」


 そういってヤポンスキーはヴァルプルギス・ナイト・マーケットが販売しようとしている新型オートプロテクターを紹介する。


「オートプロテクター”ワイルドギア”? 聞いたことないですね……遺跡で設計図でも見つかったのですか?」


 ターカーがヤポンスキーの商品説明を聞いて口を挟む。

 旧時代のテクノロジーのいくつかは解析され、今の時代でも再現製造できるようになっている。……無論コストも性能も旧時代と比べるとおとっってしまうが。


 プラントという旧時代の特殊な製造装置があり、設計図を読ませることで、新たな品を作り出すことができる。


「いえ、既存のオートプロテクター”ソルジャー”をベースに当商会の技術者たちが改造したものですよ。本体価格はこちらになります」

「いうっ!?」


 ヤポンスキーが値段を提示すると、その場にいた全員が変な悲鳴を上げる。

 提示された新型オートプロテクターの値段はミオンが得た今回の報酬の9割近くになる値段だった。


「かっ……買えなくはないけど……」

「こちらの条件を飲んでいただければここまでお安くさせていただきます」


 ミオンもさすがに躊躇する値段だったために歯切れ悪く言葉を濁していると、ヤポンスキーは電子ペーパーに値引きの条件を書き込んでいく。


 値引きの条件はオートプロテクターの修理整備はヴァルプルギス・ナイト・マーケットモール内にある専門機関でのみ、許可なく自己改造や外部ツールを組み込まない事、定期的に戦闘データーの提供、プロテクターにヴァルブルギスのロゴを表示すること。

 他にもこまごまとした条件があったがミオンには意味が解らなかった。

 上記の条件を受け入れれば今回の報酬の5割で買える金額になる。


「ミオン君が~、約束破らない限りは不利益はないよ~」

「でも、オートプロテクターなんて使ったことないし……装着方法とか」

「では、購入して戴けるならトレーナーもつけましょう」


 一緒に条件を読んでいたアリスが問題ないとミオンに説明するが、ミオンが運用の仕方が良くわからないというと、ヤポンスキーがトレーナーもサービスに付け加える。


「そこまで言うんでしたら……買います」

「毎度ありがとうございます。ところで、オートプロテクターなどを置いておく場所はおありですか?」

「え?」


 ミオンがオートプロテクターの購入を決めると、ヤポンスキーは次に保管場所の有無を聞いてくる。


「ええっと……」

「ミオン君はまだゴールデン・バックと正式にチーム組んでいませんよね? ライドメタルだけでなくて高額なオートプロテクターも預かってもらおうって思っているんですか?」


 オートプロテクターの保管場所を問われたミオンはちらりとターカー達ゴールデン・バックの面々を見る。

 ミオンの仕草を見たヤポンスキーはゴールデン・バックが保管先ですかと聞いてくる。


「ヤポンスキーさ~ん、あんまりミオンちゃん苛めないでぇ~」

「そんなつもりはないのですがねえ……謝罪します」


 アリスが助け舟を出すように注意するとヤポンスキーは心外だとジェスチャーしながら謝罪を口にする。


「それで~、ヤポンスキーさんは~、オートプロテクターの保管場所に~、提案とかあるんですか~?」

「ええ、こちらの車両などいかがでしょうか?」


 そういってヤポンスキーが3Dホログラムで見せたのは巨大なトレーラーハウスだった。

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