第74話 報酬の使い道


「さて、ミオン君。今回の報酬どうします?」

「え? ええっと……ナビィのボディ買う為に貯めようかな?」


 ヤポンスキーが今回の報酬の使い道について問うと、ミオンはしばし考えてナビィのボディの購入資金に回そうとした。


「それもいいですが、私個人としては装備の新調をお勧めします」

「え? どうしてですか? ナビィのボディ買うのに必要でしょ?」


 ヤポンスキーがアドバイスするとミオンは貯めなきゃいけないのになぜ使うことを勧めてくるのか理解できないという顔で聞き返す。


「ミオン君の選択は間違いであり、間違いではないです」

「???」


 ヤポンスキーの言葉にミオンは意味が分からないと?マークを浮かべながらリディやターカーに助けを求めるように視線を向ける。

 ターカー達はヤポンスキーの言葉の意味を知っているのか苦笑していた。


「噛み砕いて言うなら、貴方は今回の大金をポケットに入れて持ち歩くつもりですか? ミオン君、失礼ながら君の事調べさせてもらいました。普段はセキュリティもない木賃宿で盗まれないように銃を抱いて寝ているそうですね。装備すら預ける場所もないのにどこに大金置いておくつもりですか?」

「あっ!!」


 ヤポンスキーは分かっていないミオンを見てため息をついて、大金を得ることで発生するトラブルをやんわりと伝える。


「あた……ゴホン、私達がゴールデン・バックというチームを組んだのもね、一人じゃできないことを役割分担したり、遺跡潜りなどで得た報酬を盗られないために群れを作ったという意味もあるのよ」


 ターカーがヤポンスキーの前ということで言葉遣いを訂正しながらゴールデン・バックというチームができた理由の一つを語る。


「それに~、雪豹の中には~、ハイエナって呼ばれる他人の上りを横取りすることをメイン活動にしているやつらもいるんだよ~」

「そういうことですか」


 アリスがハイエナと呼ばれる素行の悪い雪豹たちがいるとミオンに知らせる。

 見たことも無い大金に自覚がなかったが、ミオンは孤児院時代にたくさんのごちそうを皿に盛ったらテーブルにつく前に暴力的な年長者たちに奪われていった時を思い出していた。

 今回の報酬はあの時のごちそうのような物で、暴力でご飯を奪って行った年長者のように今回の報酬も狙われている。


「それじゃあ装備を新調します」

「それがいいでしょう。今のミオン君がDランクを目指すには装備も経験も何もかも足りてませんからね」


 つまり、誰かに食べられる前に自分で食べきってしまうか、奪われないように隠し場所を見つけないといけない。

 隠し場所に心当たりのないミオンは装備を新調することに決めた。


「では、商談と参りましょうか。ミオン君、オートプロテクターと専用装備に興味ありませんか?」


 ヤポンスキーは笑みを浮かべたまま、ミオンにオートプロテクターと呼ばれる強化戦闘服の販売を持ちかけてきた。

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