第63話 農業コロニーの夜
農業コロニーに到着し、ミオン含むゴールデン・バッグの面々が施設のスタッフに案内されて割り当てられた部屋へと向かう。
「こちらになります」
「ここ本当に使っていいんですか?」
ミオンは案内された部屋を見て間違っていないか、不安そうに案内の人に聞く。
「ええ、こちらのゲストルームであってますよ」
案内した施設のスタッフは手元のタブレットを確認して間違っていないと伝えてくる。
ミオンが不安そうに聞いたのも、案内された部屋が一人で使うには広すぎる上に、家具などの調度品が高級に見えたからだった。
「何かございましたらこちらの電話をお使いください。では、お時間までごゆるりと……」
「あ、はい」
スタッフは一礼すると出ていき、ミオンはまるで保護された子猫のように落ち着きなく割り当てられた部屋の中をうろうろする。
「ナビィ……僕は夢見てるのかな?」
『いいえ心拍数、脈拍、脳波どれをとっても起きていると認識できます』
「そっか……夢じゃないんだ……そっか……」
呆然とした様子でソファーに座るとミオンは何度もそっかと呟く。
「僕がこうして今日まで生きていられるのもナビィ、君のおかげだよ、ありがとう」
『私達AIは人類に奉仕することが喜びです』
「それでもお礼を言わせてよ。ねえ、ナビィ……君にはお願いとかない?」
『お願いですか?』
ミオンはPDAを取り出すとナビィにお礼を述べる。
PDAの画面上に表示されるナビィはミオンから何かお願いはないかと言われ、考える仕草をする。
「うん、僕からもナビィにお礼がしたいんだ。できれば僕にかなえれる範囲だと嬉しいけど……」
(ただいまのマスターからのお言葉、深層八度にて多重保存しプロテクトを設定。量子容量が焼き切れるまで思い出として保存させていただきました)
ナビィはミオンからのねぎらいの言葉を自らの記憶容量深層八度という深い場所に刻み込むように保存する。
「ナビィ?」
『それでしたら、実体ボディが欲しく思います」
暫く返事がないことに怪訝な表情を浮かべてPDAを覗き込むミオン。
ナビィは前々から考えていた実体ボディを手に入れる計画を実行するためにミオンにボディをねだる。
「えーっと……実体ボディってことは、ARゴーグルがなくても見えたり触れたりすること?」
『はい。PDA越しですとこれまで様々な理由で離ればなれになって、マスターのサポートができませんでした。実体ボディがあれば離ればなれになる可能性も低く、こちらからマスターを捜索合流すること可能です」
ナビィはPDAの画面に実体ボディを手に入れた際のメリットを羅列させ、ミオンにプレゼンする。
「えーっと……今回向かう予定の遺跡にあった警備ロボットとかでもいい?」
『外装は特にこだわりはありませんが、私の性能を十全に発揮できる容量を持っているといいのですが……』
「とりあえず、今回確保する予定の警備ロボットでダメだったら………ヤポンスキーさんかターカーさん達に相談してみるよ」
『よろしくお願いします』
ミオンは今回の遺跡潜りでナビィの実体ボディが手に入ると良いなと思いながらも、実体ボディを手に入れるナビィとの約束を交わした。
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