第62話 農業コロニー
ヴァルプルギス・ナイト・マーケットが持つ農業コロニーは巨大で外から見ても小さな町規模はありそうにミオンには見えた。
厳重なゲートを潜り抜けて、保管倉庫前に車両は停車する。
「凄く大きな施設ですね」
「旧時代、この建物は農業と畜産を研究および実験する施設だったようで、白骨化した際に遺跡を買い取って、リビルドしたんです」
見上げるように施設を見ていたミオンはヤポンスキーに施設の感想を述べる。
倉庫のシャッターが開くと、搬入用のフォークリフトやライドメタルが荷物を運び入れていく。
「ゴールデン・バックの皆さんお疲れさまでした。今晩は細やかながら皆さんの歓迎会を催したいと思っております。皆様には部屋を用意させていただきました。なにぶん農作業がメインの施設なので相部屋になってしまいます。ご不便おかけし申し訳ございませんが、ご協力お願いします」
ゴールデン・バックの輸送護衛部隊全員が施設に到着して点呼を終えると、ヤポンスキーが今日は解散と宣言する。
「当施設内を出歩かれる場合、青いライン以外のエリアには足を踏み入れないでください。もし規則を破った場合、産業スパイとして当社企業法に沿った処罰を実行します」
ヤポンスキーはそう言うと、施設を警備する武装警備員たちを見回す。
『全員オートプロテクター装着の上、光学及びプラズマ兵器を所持しております』
ミオンが武装警備兵に視線を向けるとナビィが装備を説明してくれる。
オートプロテクターはマーケットモールで見たソルジャータイプ。銃にはコードが付いており警備兵の腰にあるコンデンサのような物に接続されている。
「堅苦しい挨拶はここまでとして、皆さんお疲れさまでした。ささやかながらウェルカムドリンク用意させていただきました」
「え、マジ? これ無汚染果物のフレッシュジュースじゃん!!」
カートワゴンで運ばれてきたドリンクを見て、アリスが驚いたような声を出す。
アリスの声を聞いて護衛メンバーたちはざわつく。たった一杯で結構な額が飛ぶジュースが提供されたのだから。
「おや、ご存知でしたか。もちろん料金を請求するなんてケチなことはしません。宣伝とユーザーの声を生産者達に直接伝えたいだけですから」
ヤポンスキーはゴールデン・バックのメンバーが躊躇しているのを見て苦笑を浮かべながら料金は取らないと伝えると、恐る恐ると言った感じでミオン含むゴールデン・バックのメンバーたちがコップに手を伸ばす。
「おいしい……」
「これが無汚染の味」
「これ一杯で雪堀三日分……毎日気軽に飲めるようになりたいなあ」
最後の一滴まで残さないように飲み干す者、じっくり味わうように一口一口喉を鳴らして飲む者、飲みほした後も呆然とコップを見つめている物など三者三様の姿を見せていた。
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