第61話 農業コロニー到着
「ミオン、せっかくだから輸送護衛時の雪豹の役割教えててやるよ」
「嬉しいんですけど、警戒とかしなくていいんですか?」
ターカーが輸送護衛時の雪豹の役割について教えると言い出し、ミオンは仕事中なのにとちらりとヤポンスキーとアリスを見る。
「護衛チームにもよるけど~、今回は探索用の車両とドローンも飛ばしてるし~、本来の輸送ルートじゃないから大丈夫だと思うよ~」
ヤポンスキーは笑みを浮かべたまま特に何も言わず、同乗しているアリスが大丈夫だとフォローする。
「ではよろしくお願いします」
「まず護衛依頼を受けるには車両とそれなりの人数が必要だ。車両がなければ車両持ちの雪豹のチームに割り振られることもあるが、あまりお勧めしない」
「え? 何でです?」
特に問題がないらしいので、ミオンはターカーのレクチャーを聞くことにした。
「相手にもよるが足元見てくるやつが多い。やれ燃料代や、どこそこ触って壊れた、運んでやったとあれこれ理由をつけて報酬を横取りしようとしたり、余計な仕事を押し付けられたり、女だったら中で襲われるなんてこともある」
「仮に~断ったり抵抗したりすると~、運が良くて雪原のど真ん中に投げ出される。運が悪いとズドーン」
ターカーが車両を持たずに護衛依頼を受けた時のトラブルを説明し、アリスが補足するように断った時の結果をジェスチャーも踏まえて補足する。
「で、車両持っていたら装備によって前列、中列、後列に割り振られる。足が速くてラッセルなど除雪装備があると先頭を任されることが多い。雪かきして後続車両が走りやすいように道を鳴らすのが主な仕事だったりする。重装甲や重火力なら後列でいざという時の殿を任されたりな」
「そのどちらでもなかったり、探知探査系なら中列が多いかな~? まあ、依頼主さん次第だけど~」
「もし襲撃を受けた場合は?」
リディが手を上げて襲撃を受けた際の対処について聞く。
「雪賊、ミュータント、どっちにも言えるけど生身で絶対に車両から降りるな。この車両みたいにピストルポートがあるならそこから弾幕を張れ」
「基本襲撃を受けたらその場からいち早く離脱が主目的だから降りたら置いてきぼりになっちゃうし~、ミミズ系のミュータントとかだと雪の中に潜んでたりして降りた瞬間足首パックンされちゃうよ~」
「弾幕ですか? 倒すではなく?」
ターカーが襲撃を受けた際は絶対に降りるなと伝え、アリスが降りたらどうなるか説明する。
弾幕を張れと言われてミオンは仕留める方向では動かないのかと疑問を口にする。
「試しにピストルポートから外を覗いてみろ」
「うわ………これは………」
『ある程度サポートはしますが、命中率の低下は回避できません』
ミオンがピストルポートから外を覗くとホバーで雪の飛沫が舞い、車両自体動いていること、雪が光を反射し狙って撃つのはほぼ不可能に思えた。
ゴーグル越しに外の様子を確認したナビィも命中率が低下することをミオンに伝える。
「こちらも向こうも動いてるし、お互い少しでも被弾を減らそうと蛇行運転したりするからな。基本弾幕張って相手を近づけさせず、逃げて諦めさせることだ」
「倒さないんですか?」
イザベラも手を上げて、襲撃者は倒さないのかと聞いてくる。
「そりゃ倒した方がいいに決まってるが……あくまで荷物の護衛がメインだ。討伐に躍起になって荷物を奪われたり破壊されたら意味が無い。討伐依頼がでるか、都市軍隊が何とかしてくれるのを祈っとけ」
イザベラの質問にターカーが答え、ターカーとアリスがこれまで受けた護衛依頼などの経験を話す。
『戦闘車両より伝達、該当施設に到達。ガイドビーコンに従い車庫に向かうとのこと』
「到着したようですね。皆さん今日はお疲れ様です」
戦闘車両からの通信を聞いたヤポンスキーは全員に聞こえるようにねぎらいの言葉をかける。
ヴァルプルギス・ナイト・マーケットが所有する農業コロニーに到達した面々はその施設設備と巨大さに圧倒されていた。
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