第58話 打ち合わせ

「すいません、呼ばれてきたんですけど」


 カフェでアウターヘブンの代表であるスネーク大塚と出会ってから数日後、ミオンはゴールデン・バックから護衛依頼の打ち合わせに呼ばれていた。


「よう、呼び出して悪かったな」

「お久しぶりです。ミオン君がい言っていた知り合いが、かの有名なゴールデン・バックだとは思いませんでしたよ。君には驚かされてばかりです」


 ゴールデン・バックのアジトの中で豪華な作りの会議室には大人数の男女がいた。


 ゴールデン・バック側はリーダーのハイレディンとその副官のティーチ、ターカーにリディとイザベラ、多数の女性がいた。


 ヴァルプルギス・ナイト・マーケット側は会頭のヤポンスキーとその後ろに強面の筋肉質の男性が数人直立不動に立っていた。


「今回来てもらったのは護衛依頼のルート選択やメンバーの顔合わせだ。ティーチ」

「皆様こちらのプロジェクターをご覧ください」


 ハイレディンが司会進行し、ティーチが機材を動かし、壁に映像を映し出す。

 壁に映し出されたのはフロストシティから件のGランク遺跡周辺の地図。


「今回使う車両はこちらです」

「ほう、ホバー式のハーフトレーラーですか」

『GTー67ザ・ロックと呼ばれるハーフトレーラーです。特徴はタイヤではなくホバークラフトで走行することです』


 車両の映像を見たヤポンスキーが呟き、同じくナビィがミオンに車両データーを説明する。


「護衛車両はこちらの雪上車で、メンバーは此方のチームが担当します」


 ティーチの紹介と同時にハイレディンの後ろに控えていた女性たちが挨拶する。


「ハハハ、これはとても華やかな道中になりそうですね。こちらこそよろしくお願いします」


 護衛メンバーの紹介を受けたヤポンスキーも頭を下げて挨拶し、ハイレディンは問題なく顔通しが終わったことにホッとしている。


「続いてルート選択ですが、こちらを予定しています」

「おや、そのルートは」

「なにか問題でも?」


 ティーチが移動ルートを説明しているとヤポンスキーが移動予定のルートに反応する。

 ティーチとハイレディンは移動ルートに問題があるのかと内心焦りながら聞き返す。


「いえ、ちょうど進行ルート近くに我々が管理運営する農業コロニーがありましてね。もし、行きは空荷で行くなら、別途輸送を依頼しても宜しいでしょうか?」

「荷物の内容は聞いても?」


 別途輸送依頼と聞いてハイレディンはすぐには食いつかず、輸送する品を聞いてくる。


「農業コロニーで働く人の食料や資材ですよ。運ぶ荷物の量にも寄りますが、此ぐらいの依頼料でどうでしょう?」

「それなら文句はないね」

「では一度コロニーで一泊して翌日に遺跡に向かうと言うとことで」


輸送の依頼が成立するとヤポンスキーはその場で書類を作成し、ハイレディンがサインする。


「ミオンからはなにか意見あるか?」

「え? えーっと………特にないです」


 ほとんど蚊帳の外に近い状態だったミオンは急に話をふられて、あたふたしながら何もないと答える。


「今回はミオンも護衛対象に含まれるからな。まあ、うちのメンバーからノウハウとか聞くといい」

「ありがとうございます」


 出発の日程も問題なく決まり、顔合わせ会議は終わった。

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