第57話 リキッドとソリッド
「ごめんね、リキッド兄さんモテないから」
「待て、ソリッド! それじゃあ俺がモテなくて僻んでいるようじゃないか?」
ソリッドが謝罪するが、謝罪内容が木に喰わないのかリキッドが噛みつく。
「え? 違うの?」
「おい……俺はだな……実力もないのに女の前でいい恰好しようとするようなやつが———」
「ミオンさんはそんな人じゃないです! 見た目で判断しないでください!!」
ソリッドは本当にやっかみだと思っていたのかきょとんとした顔で違うの?とリキッドに顔を向ける。
リキッドはミオンを指差して言い訳しようとするが、イザベラが席を立って抗議する。
「ミオンさんは私達を救うためにたった一人でサスカッチを引き付けて倒したんですよ! そんな人が軟弱なんですか!!」
「へえ、サスカッチを?」
イザベラが植物園跡で遭遇したサスカッチをミオンが倒したというと、スネークが驚いたような顔で食いついてくる。
「倒したと言っても元々片腕がなくて手負いに近い状態でしたし……」
「それでも一人でひきつけて倒したならたいしたもんだ。口だけ威勢のいい奴とは違うよなあ?」
「っ!」
ミオンはたいしたことないように自分が仕留めたのは手負いだったというが、スネークはリキッドの方を見ながらミオンを褒める。
リキッドはスネークの態度にカチンときたのか何か言おうとするが、むすっとした顔で口を閉ざして席に座る。
「お待たせしました」
そこで会話が途切れ、タイミングよく店員が注文の品を持ってくる。
「ここのコーヒーは合成品じゃなくてプラント産の豆を使っているんですよ」
ソリッドがカフェのコーヒーを絶賛する。
「ちょっと酸っぱいけど……飲みやすい?」
「あ、わかります? 何でも旧時代のアラピカという豆を使ったコーヒーで———」
ミオンがコーヒーを一口飲んで感想を述べると、ソリッドはぱあっと明るくなり、少し早口で今回のコーヒー豆の種類や焙煎方法など語り始める。
ソリッドがコーヒーに関して語り始めるとアウターヘブンのメンバーはうんざりした様子でソリッドから離れる。
「おい、ソリッド……語るのはいいが、飯ぐらいくわせてやれよ」
「あっ! すいません。僕コーヒーの事になるとちょっと夢中になって」
最後はスネークがツッコミを入れるようにソリッドを叩いて止める。
ソリッドは、はっと我に返り恥ずかしそうに本で顔を隠しながら謝罪した。
「もし、コーヒー関連のプラントの情報とか手に入ったら売ってくれませんか? 僕はコーヒーのプラントを見つけるのが夢でして」
「ええっと……もし手に入ったらということで……」
ソリッドはコーヒー関連のプラント発掘を目指しており、ミオンに情報を手に入れたら売ってほしいと持ち掛け、連絡先を交換する。
(やっぱりミオンは持ってる……)
その様子を見たリディはミオンが幸運を持っていると確信した。
理由はどうであれゴールデンバックと肩を並べるといわれるアウターヘブンのボスと既知で、その息子の一人と連絡先を交換している。
(家の為にも、私の為にも、ミオンとのつながりは持ちつづけないと!)
チームを組めなかったとしてもなんとかつながりを持ちつづけることをリディは決心した。
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