第55話 カフェとミオンの価値観
「ミオン、この後は?」
「ちょっとお腹空いたからどこかでご飯食べようかと」
「あのっ、私達が良く行くカフェ行きませんか?」
三人で勉強会をすることを決めた後、リディがこの後の予定を聞くとミオンは自分のお腹をさすりながらご飯が食べたいというと、イザベラが自分達が良く行くカフェを勧めてくる。
「カフェ? 何それ?」
「「えっ!?」」
イザベラからカフェに行こうといわれるとミオンはカフェという存在を知らないのかきょとんとする。
そんなミオンの反応を見てリディとイザベラは絶句した。
「うーん……口で説明するより、実際に連れて行った方が早いか。とりあえず行きましょう」
「あ、うん」
リディは実際に見せた方が早いと思いミオンを自分達の行きつけのカフェへと案内する。
「ここよ」
「えっ! ここにはいるのっ!?」
リディ達が案内したのは市民と非市民が入り乱れるエリアにあるカフェ。
旧時代の廃墟を再利用した物ではなく1から建築した立派な店舗だった。
それを見たミオンはぎょっとした様子でリディとイザベラを見る。
「? そうですよ? お昼はカフェで、夜は酒場という二部制営業なんです。夜は雪豹の方も多数出入りしてるんですよ」
「ここ実はすっごい高級店じゃないよね? ランチとかすごい値段だよ。これ一食で僕の一日分の食費とぶよ!」
イザベラはミオンが何を躊躇しているのかわからず、店の形態を説明する。
ミオンは表看板に出ているランチの値段を指差し、高級店ではと二人に恐る恐る聞く。
リディやイザベラと言った市民権を持つ人には一般的な値段でも、孤児院出身のミオンからすると目が飛び出る値段だった。
「……ミオン、今まであなた何食べてきたの?」
「えーっと……汚染部位を除去した鼠の串焼きとか、期限切れの廃棄されたソイバーとか……それから———」
「……せっかくGランクになったんですからもう少しいい物食べましょうよ……」
リディが不審に思いミオンの食生活を聞くと、ミオンは自分の食生活を伝える。
イザベラが少し同情するような顔でもっとおいしいものを食べようと呟いたが、ミオンからすると孤児院時代鼠の串焼きは御馳走だったし、期限切れの廃棄されたソイバーも孤児や壁際に住む非市民達にとっては貴重な栄養源だった。
壁の外に住むスラムの人々に至っては食えるかどうかギリギリの状態で、汚染除去されていない食料や時にはスラムに迷い込んだ逸れミュータントを狩って食料にしていた。
『マスター、今はお金に余裕がありますし、もう少し社会を知る為にもここで食事をとるべきでは?』
ナビィからも提案され、ミオンは恐る恐ると言った感じでカフェに入る。
ミオンが店内を見回すと落ち着いた雰囲気の内装で、入り口にバーカウンターがあり、カウンターの箸には蓄音機が置いてあり音楽が流れている。
店の奥には団体客用のテーブル席があり、そのテーブル席には団体が座っており、何やら雑談していた。
「いらっしゃいませ、三名様ですか? 此方へどうぞ」
店内に入れば背中にテーザーガンを搭載した犬型の警備ロボットを連れた女性店員が応対する。
「おりょ? お前どっかで見たような?」
「あ、こんにちは」
店員に席を案内されている途中、団体客の横を通ると団体客の一人がミオンに声をかける。
ミオンが声をかけてきた人物を見れば、以前雪豹ギルドで見かけたアウターヘブンの代表、スネーク・大塚がいた。
「え? ミオン、この人と知り合いなの?」
「えーっと、雪豹ギルドで受付の人と勘違いして」
「あー、思い出したっ! Gランクに昇格したばかりのガキか!」
リディがぎょっとした顔でミオンに知り合いかと聞き、ミオンが出会った時のことを話せばスネークも思い出したようにテーブルを叩く。
「問題がないのでしたらお隣の席用意しますが?」
「ちょうどいいや、座れや、な?」
店員がスネークの横の席を用意しようとし、スネークもそこに座れというように指をさした。
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