第54話 授業コースとイザベラの提案


「授業ってどんなのがあるんです?」

「全部は説明しきれません。こちらに冊子があるので、受けたい授業コースがあれば連絡してください。ただ、講師の方も現役の雪豹だったり本業を持っていたりするので都合が合わない場合があることご了承ください」


 ミオンが店員にどんなコースがあるか聞くと分厚い冊子を渡される。

 冊子のページを開いてみれば授業コース多種多様で、ナビィに教えてもらった射撃訓練からミュータントの解体、食肉の扱い方など雪豹活動に必要そうな授業が多数あった。


「え? 読み書きに算数もコースあるんですか?」

「ええ、雪豹の中には満足に字が書けない、計算ができない人もいます。そういった人向けのコースもあります」


 冊子に書かれていた読み書きや算数の授業項目にミオンは驚く。

 ミオンからすれば読み書き算数は孤児院で教えられるものだと思っている。

 実際にはミオンがいた孤児院は自立を目的としたカリキュラムも組み込んでいた比較的良心的な部類に入る孤児院なだけだった。


 下手すればH~Gランクの雪豹には読み書きすら満足にできない者もいた。

 口頭の説明だけ、徒党を組んで先輩についていって、そうやって日々稼いで生活している者たちもいる。


 向上心のある雪豹が生活を切り詰めて学んだり、ゴールデンバッグと言った徒党の先輩などが授業料を支払ったりして読み書きを学ばせたりする。


「ミオンも何かコース受ける予定?」

「うん、依頼日まで雪豹活動は自粛してほしいって言われたから、この機会に何か覚えてみようかと」

『マスター! 私がいれば大丈夫ですよ! ちゃんとサポートします!!』


 リディがミオンにコースを受けるつもりなのかと聞くとミオンは護衛依頼日までの間に何か技能を覚えようと思っていると答える。

 ミオンの言葉を聞いたナビィがPDAのバイブ機能で自分の存在を必死にアピールする。

 ミオンは分かっていると答えるようにとんとんとPDAを叩いてナビィを宥める。


「あのっ! もしよかったら一緒に勉強しませんか? いきなり授業受けるより予習した方がいいと思いますし。私だったら爆薬関連教えれると思います」

「イザベラ、いい考えね! 私も教えれる事あると思うけどどう?」

「えーっと……いいの?」


 ミオンとリディの話を聞いていたイザベラが手を上げて一緒に勉強しないかと提案し、リディもそれに便乗するように同意する。


「駄目だったらイザベラも提案しないでしょ?」

「えーっと……」

「予習や一緒に勉強するのは問題ないですよ。こちら側の強みは証書や免許といった公的な資格受講完了者証明が出せるってことですから。どんなに知識があっても証書がなければ自称でしかないし、販売できません」


 ギルドショップ側はどうなのかとミオンが店員を見ると店員は全然大丈夫だと答える。


「じゃあ、お願いしていい?」

「もちろん」

「はいっ! よろしくお願いします!」


 こうしてミオンはリディ達と勉強することになった。

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