第51話 リペアショップ【ザ・カウント】
「……なんでそんな所の仕事貰えたの?」
リディが疑惑の目でミオンに質問する。
リディからすればヴァルプルギス・ナイト・マーケットと言えば都市市民の中でも上流階級の人達がお近づきになりたいと思ってもなかなかコンタクトが取れない商会。
孤児院出身のGランクに上がったばかりのミオンが持ってるなんて想像すらできないコネクションだ。
「えーっと、偶然バトルリングの会場でマーケットの人と出会って、そこでライドメタル関連の発掘品を見つけたらもちこんでほしいと言われてね。Gランクの遺跡で見つけた遺物を持っていったらそういう流れで……」
ミオンはハイレディンから注意を受けたので自分なりに気を付けたつもりでヤポンスキーとの出会いを伝える。
「凄い偶然ですね……」
「本当にね……」
リディとイザベラは改めてミオンが幸運の持ち主だと確信する。
「そうだ、二人はライドメタルが整備できる店とか知らない?」
「ミオンが持ってる工事用ならここでもできるんじゃ?」
ミオンが話題を変えるようにライドメタルの整備ができる店の場所を聞けばリディは小首を傾げてゴールデンバッグでも整備できるよと伝える。
「ここの整備の人から言われたんだけど、一度分解してフルメンテしろっていわれて……お願いしたらそこまで面倒は見られないって整備の人に言われて」
「あー……ゴールデンバッグの整備部門人手不足でいつも残業ですもんねえ」
ミオンが保護された時に工事用ライドメタルは簡単な整備は受けてはいるが、やはり長年放棄されていた為、フルメンテの必要性があった。
今まではお金がなかったが、ゴールデンバックの搬入作業を手伝うことで簡易整備はしてもらえたので何とかなった。
アメコミのレンタル料で大金が入ったので、ミオンはここでフルメンテに出すことにした。
「そういうことならリペアショップのザ・カウントがいいと思います」
「あー、あそこね」
ミオンの話を聞いたイザベラが心当たりのあるリペアショップの店名を口にするとリディも知っている場所なのか納得している。
「案内してくれないかな?」
「そうね……今から行く?」
リディとイザベラの道案内をつけてミオンは件のリペアショップへと向かう。
リペアショップは商業エリアのはずれにあり、巨大な駐車場にはライドメタル、戦車、雪上車にスノーモービルなど様々な車両が展示されており、店員と思われる人達が雪かきしたり、ガレージ兼修理工場で修理中の車両の溶接や研磨に塗装をしていた。
「ライドメタルだけじゃなくていろんな車両もあるね」
『戦車は全体的に軽量級が多く見受けられます。中には雪原での活動には不向きな車両もありますね』
駐車場を見て様々な種類の車両を見てミオンは興奮している。
ナビィは駐車場に置いてある車両の種類を分析し、ミオンに解説する。
「ミオン、ショップはこっちよ」
リディの案内でショップになっている建物をミオンは見上げる。
三階建ての建物で、派手なネオンでザ・カウントという店の名前が装飾されており、入り口には逆十字架をモチーフとしたロゴマークがペイントされていた。
「ダニィィィィィッ!! てめぇまた勝手に売りもんに角つけやがったなあああ!!」
「なんで怒るんだよオヤジ? 角つけた方が格好いいだろ?」
店内に入った途端、作業着にスパナを持った中年男性の怒鳴り声と頭を抱えて涙目になってる角の生えたバンダナを装着している青年がいた。
「あんなもん付けたらデッドウェイトで機体バランスが崩れるだろうっ!」
作業着姿の中年が指さす方向には大型バスがあり、四方八方に角が備え付けられていた。
「それを親父の長年の技術で———あいたっ!」
角バンダナの青年が言い訳しようとしてスパナで殴られて悲鳴を上げていた。
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