第45話 ヤポンスキーからの依頼


「ええっと……案内するのはいいんですけど、その……僕は自分の身を守るのが精いっぱいで」

「うん、自分の身の丈を理解しているというのはいいことですよ。ミオン君、君の知り合いで護衛を引き受けてくれるような雪豹に心当たりはないかね?」


 ヤポンスキーが一緒に遺跡に行くと提案し、ミオンは護衛に関して不安があると伝えると、ヤポンスキーはミオンの知り合いに護衛できる雪豹がいないか聞いてくる。


「護衛ですか? 受けてくれるかわかりませんが心当たりなら……でも、ヤポンスキーさんなら商会の護衛とか持ってないですか?」

「確かに自前の護衛はいますが、私とミオン君はそこまで信頼関係を築けていません。もしかしたら遺跡で私が護衛に命令して君を殺すかもしれません。まあ、そんな面白くもなく、もったいないことしませんが」


 ミオンは護衛を引き受けてくれそうな雪豹と言われ、ゴールデンバックのターカーを思い浮かべるが、ヤポンスキーの商会が持つ護衛をなぜ使わないかと聞く。

 ヤポンスキーは自前の護衛を使わない理由をミオンに説明する。


 都市の外は無法地帯。ヤポンスキーがミオンを殺して成果を奪っても誰も文句を言わない。

 仮にミオンが生き残って都市に訴えたとしても、都市郊外の出来事で行政は取り合わない。


 ミオンが噂を流しても、Gランクの後ろ盾も何もない孤児院上がりの雪豹と大きなマーケットを持つ商会の会頭。どちらが都市にとって重要か、考えるまでもない。


「それに……自前の部隊動かすと仕事サボって遊びに行くのが、専務に気づかれてしまいますしね」

「え?」

「いえ、なんでもありませんよ。ミオン君の心当たりの雪豹さんが引き受けやすいように、依頼という形で書類を作りましょう。それを心当たりの方に見せれば、普通に声をかけるよりは効果があるでしょう」



 ヤポンスキーは軽く笑みを浮かべると、パソコンを操作してPDFを作り、ミオンのPDAに送付する。


 ミオンが送付されたPDFを確認すると、現地までの輸送と護衛の依頼で、燃料や弾代などの経費は報酬と別途で全てヤポンスキーが持つとヤポンスキーのサイン付きで明記されていた。


「ありがとうございます。ヤポンスキーさんの商会ってすごいですね、僕圧倒されましたよ」

「いえいえ、各都市を運営管理している十大企業と比べれば吹けば飛ぶ零細企業ですよ。がむしゃらに働いて何とか従業員達を食わせていけてる程度ですよ。おっと、電話ですね失礼」


 ミオンがヤポンスキーの商会を褒めると、ヤポンスキーは謙遜するように答える。

 とりとめの雑談を交わしていると内線電話が鳴り、ヤポンスキーが応対に出る。


「申し訳ない、次の面会の時間のようです。案内の者を用意しますので」

「あ、はい。お邪魔しました」


 次の面会者がやってきた旨の連絡だったようでヤポンスキーはため息をついて案内係を呼ぶ。


「あ、出発とかはいつがいいですか?」

「そうですねえ護衛の人の都合もあるだろうし……鑑定結果とコミック読みたいし……あの会合はキャンセルして……あっちの商談は外すと専務が五月蠅いし……来週また連絡ください。予定を空けておきます」


 ミオンが出発の予定日を聞くとヤポンスキーは手で口を押えながら独り言をぶつぶつ呟き、来週に再度連絡をするように伝えてくる。


「ご案内します」

「あ、はい」


 行きは警備員だったが、帰りはスーツを着た男性がミオンを案内する。


「あ、そうだ。ナビィ、ターカーさんに明日会えないか連絡を取ってくれる? 借金返済と一緒に護衛依頼のの相談したい」

『了解しました』


 ミオンはナビィに連絡を頼むとミオンはいつもの宿に向かった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る