第43話 ヤポンスキーとの再会


「いや、本当に———」

「警告する。速やかに立ち去らない場合、企業法第276条、第四項目に基づいて実力行使する」


 追い払う警備員にミオンが食い下がろうとすると警備員はテーザーガンの銃口をミオンに向けて警告する。

 犬型の警備ロボットも警告するように唸り声をあげ、目の色が戦闘モードを知らせる赤色に変わった。


「はっ? いえ……そんなつもりは……はいわかりました、丁重に案内いたします」

「え?」


 銃を向けられミオンがどうしようか悩んでいると、突如警備員が耳に手を当てて誰かと会話している。


『オートプロテクターに搭載されている通信装置で会話していると思われます』

「失礼しました。アポイトメントの確認は取れましたので、私が責任を持って会頭室までご案内させていただきます」


 通信を終えた警備員は先ほどの態度とはうって変わって、ミオンに対してまるでVIPのように丁重な対応に変わった。


「私についてきてください」

「あ、はい……」


 警備員は緊張した声でミオンを先導するように歩く。


「うわぁ……暖かい……」

「マーケットモール全体を快適な温度にするためにあちらのスチームハブが稼働しております、また店内は———」


 ミオンがマーケットモール内に足を踏み入れると、防寒具が必要ないほどモール内の気温は整えられており、店内にいる客達も防寒具を脱いで煌びやかな服装で買い物を楽しんでいた。


 先導する警備員がハキハキとした口調でマーケットモール中心部にある巨大なスチームハブを指差し、暖房を一括管理していると説明する。


「あれは?」

「モール内を監視巡回する自律飛行型ドローンです。万が一、モール内でトラブルが発生した場合、ドローンが警報を鳴らし15秒以内に警備スタッフが駆けつける仕組みになっております。ここ最近は迷子の発見が主な仕事になっています」


 ミオンはマーケットモール内を飛行する機械を目撃し指をさす。

 ミオンが指さした方向にはターレットのついた円盤がモール内上空を行き交っており、それを見た警備員がドローンであると説明する。


「失礼します! お客様をお連れしました!!」


 マーケットモール内のオフィスエリアに案内され、オフィスエリアの中でも網膜、指紋、声帯、静脈の五重セキュリティがされた厳重なゲートのインターコムに警備員が話しかけ、ロックを解除する。


「やあ、いらっしゃい」


 ゲートドアが開いたかと思うと、バトルリング会場で出会った時とよく似たスーツ姿のヤポンスキーがミオンを出迎え、ヤポンスキーの対応を見た警備員が真っ青を超えて土色の顔でミオンとヤポンスキーを交互に見ていた。


「彼は私の友人だ。今回君は仕事を忠実に全うしようとし、少し力を入れすぎただけだったね。君は人の顔を覚えるのが得意だろう? 彼は私の友人だ、よく覚えておいてくれたまえ」

「ハッ!」


 ヤポンスキーはにこにこ笑いながら土色顔でガタガタ震える警備員の肩を叩いて声をかける。


「次はないと思いたまえ」


 ミオンには聞こえない程度の声でヤポンスキーは警備員のそう伝えるとミオンを連れて部屋へと戻る。


 ミオンを案内した警備員は閉じたゲートの前で立ったまま気を失っていた。

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