第42話 ヴァルプルギス・ナイト・マーケットモール
『通信可能行きに到達したので、ヤポンスキー氏にアポイトメントの連絡をします』
「ああ、よろしく」
送迎用の雪上車の中で都市に近づいてきたのかナビィがヤポンスキーに連絡を取ってくれる。
ミオンは高く売れると良いなと思いながら雪上車の窓から外の景色を見て時間を潰していた。
『ヤポンスキー氏から返信がありました。商会事務所にいるのでそちらに来たら面会してくれるそうです』
「雪豹ギルドで帰還の手続きをしたら向かわないといけないね」
遺跡潜りから帰った後は雪豹ギルドで帰還手続きをすることになっている。
手続きをしない、後回しにすると重い罰則があり、ギルド職員からも必ず帰還手続きするようにと口酸っぱく注意されていた。
理由としては発掘品が危険物(大規模破壊兵器、BC兵器、汚染された品)だったり、ミュータントとの交戦で傷ついた場合、病原菌や卵を植え付けられている可能性がある為、それの有無、遺跡を守るターレットのパスコードをコピーや改竄させない為だといわれている。
「えーっと……本当にここであってるの?」
『先方から提示された地図と住所はあっています』
雪豹ギルドで帰還手続きを終えたミオンは、ヤポンスキーが営む商会がある地区へと向かう。
アポの連絡取った際に添付された地図とナビィの道案内で辿り着いた場所は、超巨大スチームハブを中心に一区丸ごとマーケットモールになっている場所だった。
マーケットモールはミオンが孤児院時代住んでいた地区の様な倒壊しかかった旧時代の廃墟を再利用した物ではなく、瓦礫を撤去し、整地された土地にその目的の為だけに作られた巨大建築物だった。
マーケットモールの入り口には巨大な篝火のロゴマークのホロヴィジョンで表示されており、【ヴァルプルギス・ナイト・マーケットモール】と表示されている。
「えーっと……この中の店舗の一つがヤポンスキーさんのお店とかかな?」
『検索中……ボリショイ・ヤポンスキーという名前の店舗該当0件です】
案内板を見れば数えるのも億劫になるほどのモール内にテナントを構える店舗名一覧が表示されている。
ナビィが案内板の名前一覧の画像を取り込み検索するが該当する店舗は検出できなかったとミオンに伝える。
「中に入って探すにしても……入りにくいなあ……」
マーケットモールの利用客は皆高級そうな防寒具を着た小奇麗な人達ばかりで、下層の孤児院出身のミオンからすると自分とは違う世界のように見え、見えない壁で遮られているように一歩足を踏み出すことができなかった。
「当マーケットに何か御用ですか?」
「ええっと、ヤポンスキーさんと会う約束をしていて……あ、これ身分証です」
マーケットモールの近くでうろうろしているミオンを不審に思ったのか、歩哨に立っていた警備員の一人が犬型の警備ロボットを連れて声をかけてくる。
『警備の方が装着しているのはアメリカ陸軍標準オートプロテクター【ソルジャー】ですね。警備ロボットの方はハウンドMKタイプです』
その警備員も防寒具姿ではなく、モーター駆動音の聞こえる機械の甲冑に身を包み、暴徒鎮圧用のテイザーガンを装備していた。
ナビィが警備員と警備ロボットの名称と性能を解説する。
「拝見させてもらいます……Gランクの雪豹? 坊主、会頭は多忙なお方だ、お前みたいな低ランクにいちいち面会するわけがない。何も見なかったことにするから大人しく帰れ」
最初は丁重な態度だった警備員だったが、ミオンの外見とGランク雪豹という身分から面会はでっちあげだと判断し、野良犬を追い払うような仕草をして帰れといってきた。
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