第41話 ナビィのアイデア


「で、この警備ロボットで何をするの、ナビィ?」

『警備ロボットをハッキングして救援要請の停止、整備履歴のチェック、整備業者及び担当者名を確保と業者ID……チェック。暗号化……解除。我々を本部メンテナンス部門より派遣された整備士へと偽装しました』


 床から起き上がったミオンはナビィにこれからどうするか聞くと、ナビィは自分が何をしたか説明する。


「整備士? それでどうにかなるの?」

『整備状態が悪い機体やAIというのは自己保存を最優先し、整備を強く望む傾向があります。整備士を偽装信号でマルクスM2に近づき、メンテナンスと偽ってハッキングをかけます』

「うーん……他に方法がないし、ナビィを信じて試してみよう」


 ミオンにとって整備士の設定でどうにかなるというのは眉唾物だったが、他に方法は思いつかず、ナビィの言うことだからと作戦を実行することにした。


『メンテナンスタッフノカタデスネ、メンテナンスヲオネガイシマス』


 ミオンが質屋へ向かうと、金庫前にいたマルクスM2はミオンの姿を認識すると、不法侵入者ではなく、メンテナンススタッフと認識して修理を求めてくる。


「やっ……ごほん、お任せください」


 ミオンはおもわずやったと叫んでガッツポーズを取りたくなるが、下手な行動で偽装がばれるわけにはいかないと我慢し、メンテナンススタッフを装う。


『マスター、マルクスM2のメンテナンスハッチは背中です』


 ナビィがARゴーグル上にマルクスM2のメンテナンスハッチの位置と開け方を表示する。

 ミオンはナビィの指示に従ってマルクスM2のメンテナンスハッチを開け、PDAのコードを差し込む。


『IFFセッテイヘンコウ……サイキドウチュウ……ゴメイレイヲ、マスター』

『システム書き換え終了しました。この警備ロボットは貴方の物です、マスター』

「凄いっ! 君は最高のパートナーだよ! ナビィッ!!」


 いくつかオミットされているとはいえ軍用の警備ロボットを手に入れたミオンは歓喜に振るえ、ナビィのPDAにマスク越しだが何度もキスをする。


『マスターの喜びが私の喜びです。金庫のパスコードはマルクスM2から吸い取りました、中身を確認しましょう』

「そうだったね、売れるお宝があると良いな」


 ミオンが金庫を開けると中は暗い。ミオンは携帯している懐中電灯で金庫内を照らす。


『人口宝石ですね。こちらの金のアクセサリーは本物です』

「とりあえず持って帰れるものは全部持って帰ろう」


 貴金属が安置されている棚を見るとナビィが宝石を見て人口宝石だと鑑定する。


「旧時代の紙幣か……量が多いな」

『今の時代で使われていないなら、コレクション価値があるかないか問われます』

「……どれがお宝で、どれがガラクタかわからないのは困るな……」


 他にも用途不明の品々が安置されているがミオンにはそれが価値があるかわからない。さすがに全部持って帰れる量ではないので厳選しないといけない。


『現在の価値観をインストールできれば助言できるのですが……』

「……それか、価値を知ってる人を連れてくるか……」


 ミオンはこの金庫内の品々の価値が分かりそうな人物を思い浮かべる。

 最初に思いついたのはバトルリングで出会ったヤポンスキー、次にゴールデンバックのターカーさん達。


「とりあえず今日は手を触れずに写真だけ撮って、ヤポンスキーさんとかに見せて鑑定してもらおう」

『それがよろしいと思います』


 ミオンはPDAを取り出しフォトモードで金庫内の品々を写真に収めていく。


「ん? これは……?」

『アメコミと呼ばれる本ですね。ライドメタルパイロットを主人公にした作品のようです』


 写真を撮っていると厳重に保管された本があった。

 表紙にはライドメタルとパイロットスーツを着た少年のイラストがあるが、その拍子と裏表紙にミミズが這ったような落書きがされていた。


 コミックが置いてあった棚を調べると他にも緑色の肌をしたマッチョや、腰蓑に棍棒を振り回すマッチョなど、様々なジャンルのコミックがあった。


「……これがあればヤポンスキーさんと面会しやすいかな?」

『手土産があった方が良いと思われます』

「じゃあこれと貴金属を持って帰ろうか」


 ミオンは保管されていたライドメタルのコミックだけを回収すると、金庫のパスコードを変更し、マルクスM2と館内を巡回する警備ロボットを何体か金庫の番に置いてフロストシティへと戻った。

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