第39話 Gランク遺跡

「ここが件の遺跡か……昔はショッピングモールだったんだっけ?」

『そうです。休日には多くの客で賑わった場所です』


 ヤポンスキーとの出会いから数日後、ミオンはGランクの遺跡潜りに挑戦していた。

 一階建ての横に巨大な建築物。戦争か経年劣化の影響か、建物の大半は朽ち果てており、かろうじて残っているエリアが今回の探索場所だ。


『雪豹ギルドの情報では一部警備システムとテイザーを装備した警備ロボットが巡回しています。施設内で銃を撃つ、スタッフエリアに踏み込む、支払いをせずに商品を持ち出すと警備ロボットが捕縛にきます』


 防寒具のARゴーグルにナビィが現れ、注意事項一覧を表示させる。


「普通に入る分には危険はないんだね」

『客として認識されるようです』

「ならまずは普通に入ってみるかな」


 雪豹ギルドが設置したターレットにコードを送信して停止させると、ミオンはショッピングモールに侵入する。

 試しにハンドガンを抜くと、管内のスピーカーから音割れした声で警告を発し、警告に従って銃をホルスターに収納すると警告は止まる。


「ほとんど持ち去られているなあ……」


 客を装ってショッピングモール内を探索すると、倒壊を免れた店舗はほとんど荒らされており、ガラスのショーケースなどは破壊され、展示用のマネキンは引き倒され、商品棚は荒らされていた。


「随分と動きの悪い警備ロボットだな」

『長期の稼働とメンテナンスを受けていないことによる劣化と不具合によるものと推測します』


 ショッピングモールを巡回する警備ロボットは動きがぎこちなく、動くたびに錆が擦れる不快な音や老人か足が痺れた人が歩いているような仕草だった。


「お、動いてないロボットはっけ……なんだ、ガワだけか」

『清掃用のロボットですね』


 通路の片隅に動いてないロボットを発見し、ミオンが喜び勇んで近づくと中身が全て抜き取られていた。

 ガワは錆びており、スクラップにすら適さないと判断されたのか放置されていた。


「ここは?」

『質屋ですね』


 ミオンは比較的無事な店舗を発見し、店内に足を踏み入れる。

 元は壁か何かあった瓦礫の向こうに金庫の扉があり、その扉の前にはモール内を巡回する警備ロボットより一回り大きい警備ロボットが仁王立ちしていた。


『ケイコクシマス、ココカラサキハスタッフエリアデス。ケイコクヲムシシテアシヲフミイレタバアイ、シュウホウニシタガイ、シャサツシマス』


 金庫の様子を窺おうとすると、仁王立ちしていた警備ロボットが起動し、銃砲になっている腕をミオンに向けて警告してくる。


『軍施設などで使われる警備ロボット、マルクスM2ですね。おそらく民間への払い下げ品でしょう。正規のM2と比べて武装はいくつか排除されているようですが、マスターの装備では破壊は困難です』

「そうだね……他の雪豹たちもここは諦めたんだろうね」


 ナビィが金庫を守る警備ロボットの性能を解説する。

 ミオンが改めて店内やマルクスM2を見ると戦闘の形跡がある。

 ミオンが来る前に来た雪豹たちの中にはマルクスM2に挑んだ雪豹もいたようだが、乾いて黒くなった血痕や壁の銃痕、未だ佇むマルクスM2の姿からどうなったか予想できる。


「ここを何とかすればいいんだけど……」

『マスター、提案があります』


 どうしたものかと悩んでいると、ナビィから提案が出された。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る