第37話 ヤポンスキーからの提案
続く第三試合は工事用ライドメタル同士の試合。
パイロットの腕が悪いのか、元々そういった格闘用ではないライドメタル同士のせいなのか、第三試合は泥仕合。それがミオンの試合印象だった。
お互いもっそりした動きで近づき、子供の喧嘩のように足を止め合って腕を振り回して殴り合う。
第二試合でのラグバトル用のライドメタルの動きを見た後のせいで、余計に第三試合の選手たちの動きが悪く見えてしまう。
最後は青コーナー側のライドメタルがダメージの蓄積による動作不良を起こして降参し、決着がついた。
「うーん……工事用ライドメタルだとバトルリンクは不利っぽいなあ」
「そうでもないですよ。あのもっさりとした動きがいいという人もいるし、元は工事用のライドメタルでも中を弄って軍用……というのはちょっと大げさですけど、いい動きする機体もありますし、パイロット次第ともいえます」
ミオンが第三試合の感想を呟くと、ヤポンスキーが運用次第だと答える。
第三試合が終わるとインターバルとして30分の休憩中が挟まれる。
試合会場ではアイドルっぽい女の子の集団のライブが始まり、歌を歌っていた。
曲はよくわからなかったがステージ演出はホログラムと立体映像を駆使していて、追っかけと思われる人達が推しの名前が刺繍された法被を着てペンライトを両手に持って独特のダンスを踊っている。
インターバルを終えて本日のメインイベントであるブロウバトルが始まる。
「なに……あれ……」
『コンクリートの塊が付いた鉄骨ですね ラグバトル用のライドメタル、グリズリーがベースのようです』
赤コーナー側が持っていたのはナビィが表現したように先端にコンクリートの塊がついた鉄骨だった。グリズリーの名称がついてある通り、熊のような外見をしたライドメタルで、観客にアピールするように両手で持ってメイスのように振り回している。
「……あの病院のドクターか、ドクターの知り合いかな?」
『軍用のライドメタル、フォッカーがベースですね。あのドリルは兵器としては無意味ですし、掘削するにも可動域があっていません』
青コーナー側はドリルだった。さらに両肩に肘に膝にもドリルがついていた。
機体を見たナビィがあちらこちらに搭載されたドリルが無駄だと評価した。
試合は赤コーナー側の機体の圧勝だった。
試合開始と同時にコンクリートの塊を敵に投げつけ、虚を突かれた対戦相手は回避する余裕すらなかったのか、運悪くコクピットに直撃。パイロット死亡による決着だった。
バトルリンクのすべての試合が終わった後、ミオンとヤポンスキーは屋台街で食事をとる。
「ミオン君は遺跡には潜るのかね?」
「メインは雪堀ですが、追々挑戦しようかと……」
食事をしながらヤポンスキーは、ミオンに遺跡に潜るか聞いてくる。
「もしもライドメタル関連の発掘物を見つけたらギルドに売らずに私の方へ持ってきてほしい。物にもよるが、ギルドよりも高く買い取ろう」
「ライドメタル関連ですか?」
「ああ、私はコレクターでね。君以外にも声をかけて、見つけてもらってはこっちに持ってくるように言っている」
ヤポンスキーはライドメタルのコレクターらしく、いろんな雪豹にライドメタル関連の発掘物を買い取っている。
「最近Gランクになったばかりでご期待に沿えないかもしれませんが……」
「何、今すぐどこそこの遺跡に潜ってとってこいって話じゃない。それっぽいものを見つけた時に思い出してほしい。私にとってライドメタルは———」
ヤポンスキーは自分がどれだけライドメタルに魅せられているかミオンに熱く語った。
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