第36話 レギュラーバトルとボリショイ・ヤポンスキー


『ちょうど最初の試合が終わった所のようですね』


 スタジアムに入場するとレギュラーバトルの第一試合は終わった模様で、現在はインターバル中らしい。

 スタジアムの入り口では巨大なモニターが設置され、次の試合の選手のプロフィールとメタルライドの画像が表示されている。


 機体の画像に視線を向けるとナビィがメタルライドの機体名を説明してくれる。

 赤コーナー側がミオンが持ってる工事用メタルライドと同種で、追加装甲版をつけ、全身黒く塗装して、肩に薔薇を咥えた頭蓋骨のエンブレムが描かれている。


 青コーナー側は人型ロボットにアメフトの防具を着用させたようなメタルライドで、シルバー塗装でビリヤードの9番というエンブレムが機体の胸に描かれていた。


『片方は工事用のメタルライド、もう一つはラグバトルというスポーツ競技で使われたメタルライド、【ニノス02】ですね』

「ラグバトル?」

「おや? 君はラグバトルを知っているのかい?」


 ナビィから聞きなれない用語を聞いてミオンが聞き返すと、隣にいたスーツ姿の白髪の混じった黒髪オールバックに眼鏡をかけた糸目のアジア系の男性に声をかけられる。


『ラグバトルとはアメリカンフットボールをベースにした物で、メタルライドに搭乗して行われるスポーツ競技です』

「ええっと……アメリカンフットボールをベースにしたメタルライドの競技と聞いてます」

「ほほう、君は随分と物知りだね」


 ナビィのサポートを受けながら、ミオンはラグバトルについてアジア系の男性に解説するとアジア系の男性は同好の士を得たような笑みを浮かべる。


「おっと、自己紹介がまだだったね。私の名前はボリショイ・ヤポンスキー。小さな商会を営んでいるものだ」

『ロシア語で凄い日本人という意味です』


 アジア系の男、ヤポンスキーは自己紹介すると電子名刺をミオンに手渡す。

 ナビィが電子名刺を読み込み、男の名前の意味をミオンに知らせる。


「凄い日本人? あ、ミオンです。Gランクの雪豹です」

「素晴らしい! ロシア語の知識もあるとは君は中々有望な雪豹のようだね!」


 ミオンがナビィから教えられたヤポンスキーの名前の意味を口にすると、ヤポンスキーはミオンの両手をガシッと掴み、強く握りしめる。


「おっと試合が始まるようだ。ミオン君だったかな? 今日の試合が終わった後、時間が在るなら少し付き合ってもらえないかね」

「ええっと……予定はないので……人の多いところでよければ」

「ふふ……最低限の警戒心はあるようだね。うん、ますます気に入ったよ。おっと、それより試合だ試合!!」


 ヤポンスキーはミオンの手を掴んだまま、試合に集中する。

 ミオンはヤポンスキーの手を振り払うべきかどうするか悩みながら、とりあえず試合を見ることにした。

 後方の観客席にいた女性陣が、ミオンとヤポンスキーのやり取りを見て、薄い本が厚くなるわーと涎を拭きながら呟いていた。


 第二試合は一瞬で勝負がついた。試合開始と同時に青コーナーのメタルライドがローラーダッシュし、勢いをつけたパンチが相手選手のコクピットに命中。衝撃で相手選手が気絶したのか試合終了となった。


 観客席では試合終了と同時に一部の観客席からリングに向かって物が投げ込まれる。

 そのうちの一つがミオンの足元に落ちて、拾い上げると低用量の電子チップだった。


『このチップが掛札になっていたようですね。データを読み取った所、赤コーナーの選手にいくらかけたか書き込まれています』


 ナビィがそのチップを読み込み、電子チップの正体をミオンに教えた。


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