第35話 バトルリング


「えーっとこっちかな?」

『ギルド職員の地図に偽りがなければこの道で合っています』


 ミオンは雪豹ギルドの受付職員が言ったバトルリングがどんなものか、覗きに都市の歓楽街へとやってきていた。


 歓楽街は昼夜問わず店が派手なネオンを点滅させて存在をアピールし、ショーウィンドー越しにブルーライトで照らされた店内では下着姿の女性が道行く客達にアピールしている。


『マスター、あの建物が目的の場所です』


 ARゴーグル越しにナビィが指さす方向には半分崩壊したスポーツスタジアムがあり、これから何か催し物があるのか、数多くの人がスタジアムに向かっている。


 スタジアムに近づくと3Dホロでバトルリングの今日の対戦メニューが表示されており、別の3Dホロでは出場選手と搭乗しているライドメタルの紹介動画や協賛企業のCMが流れている。


 スタジアム近くには飲食物からバトルリングに出場する選手のプロマイドやサインが描かれたグッズなどを販売する露店が並んでいた。

 露店も廃材をかき集めたバラック小屋から、移動店舗式の車両など様々なスタイルの店があった。


「すいません、これとこれを」

「あいよっ!」


 ミオンは飲食物を売っている露店で注文する。


「バトルリングって人気なの?」

「なんだい? よその都市から来たのかい?」


 孤児院出身で、生きるのに必死だったミオンはバトルリングについて知識がなく、露店の店主に質問すると、露店の店主はミオンを他所の都市から来た人物と勘違いし、バトルリングについて説明を始める。


 バトルリンクとはメタルライド達を戦わせて、観客は試合の観戦や賭けをするのがメインだと店主は言う。


「今日はレギュラーバトルが3試合にブロウバトルが1試合だ!」

「レギュラー? ブロウ?」


「レギュラーってのは武器を一切使わずに殴りあう試合。一番安全だが配当も低い。ブロウは様々な近接武器を使ったバトル。選手に死人もでるが、盛り上がる」


 店主はバトルリングの熱狂的なファンらしく試合方式や今日の参加選手のプロフィールとか聞いてもいないのに説明してくる。


「一番の醍醐味はリアルバトルだ! 今日はないが近接武器OK、射撃武器OK、搭乗者を殺してもペナルティなし、観客席に流れ弾が飛んできて観客も死ぬ可能性があるという、参加者も観客も頭のネジがぶっ飛んでいるとしか思えない試合形式だ!」

「観客席に流れ弾!?」


 店主は異常な興奮でリアルバトルを語る。選手も観客も死亡率の高い試合だが一番人気でファイトマネーも賭けの配当金も一番高いという。

 観客席にも流れ弾が来ることもあり、チケット購入時には怪我や死亡しても文句言わないという同意書にサインを求められるという。


「付け焼刃程度にバリケードが張ってる。役立ったことはないがな」

「実弾じゃなくてペイント弾とか……」

「そこは実弾じゃないとリアリティーがないだろ?」

「アッ、ハイ……」


 ミオンがペイント弾の使用を口にすれば、店主は何言ってんだこいつという顔で否定される。


「そんな危険な試合なのに一番人気なんですか?」

「特にリアルバトルのチケットは他の二種の試合形式よりも速く売れすぎてな。特にパペットマスター、鬼殺しの娘という花形選手が参戦したリアルバトルじゃ、チケット求めて殺人事件が起きたぐらいだ」


 ミオンは理解できないといった表情でバトルリングの試合形式など聞く。


「今日はメインイベンターもいないから席もとりやすいと思うし、覗きに行ってみなよ」

「ちょっと覗いてみます」


 ミオンは物は試しとスタジアムへと向かった。

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