第24話 悲劇


「サスカッチというのはミュータントにしては大人しい生物でね、一部の例外を抜いてこちらから攻撃しない限り襲ってこないミュータントなんだ」

「一部の例外って何です? あ、そこの通路を右にっ!」


 ミオンとターカーはリディ達のチームに合流すべく銃乗員の通路を走っていた。

 その道中、ターカーがサスカッチの生態について説明していた。


「子育て中のサスカッチは気性が荒くなって動く物全てに攻撃を仕掛けるんだよっ! カメラに映ってたのは幼体だからどこかに親がいる! 幼体はともかく、成体はあの子らの装備じゃ対応しきれない! 頼むから攻撃を仕掛けないでくれよ」


 ターカーは祈る様に言うが、その祈りを無視するように園内に銃声が響く。


「銃声!?」

「くそっ! 間に合ってくれ!!」


 目的地まであと少しという所で進行方向からトパパパと連射音が聞こえてくる。

 ターカーは悪態をつきながら、いつでも攻撃ができるように軽機関銃を構える。

 ミオンもターカーを見てショットガンを構えて何時でも撃てるようにチャンバーに装填する。





「見たことないミュータントだったけど、あっけなかったわね」


 キャサリンがサスカッチの幼体の死体に銃口を向けながら感想を述べる。

 リディ達のチームはサスカッチの幼体に遭遇した瞬間に攻撃を仕掛け、これを撃退した。


「イザベラはサーマルエナジーの採取を」

「はっ、はい!」


 リディは周囲を警戒しながらイザベラに倒したミュータントからサーマルエナジーを採取するように指示し、イザベラは背嚢を降ろして採取器を取り出すと、サスカッチの死体に採血するように針を刺し、サーマルエナジーを採取していく。


「ニノとニナはリロードした後、他にミュータントがいないか探索、キャサリンと私はイザベラの護衛よ」

「は———」


 ニノがはーいと返事をしようとした途端、上空から飛び降りてきた存在に踏み潰される。


「え? ニノ?」


 ついさっきまで横にいた双子の片割れが圧死したことが理解できず、ニナはニノの名前を呼び、踏み潰した存在に視線を向ける。


 ニナの視界に映ったのはニノを踏み潰した巨大な生物が口が大きく開き、無数の鋭い牙が自分に迫ってくる姿、それが彼女が最後に見た風景だった。


「ニノ! ニナっ! よくもっ!!」


 ニノを踏み潰され、ニナの頭部を噛みちぎった存在。それは自分達が先ほど倒したサスカッチの幼体によく似た姿だった。

 幼体と比べて全長3mは超えており、灰色の体毛は二人の返り血で赤く染まっていた。


 キャサリンがBD9の銃口を二人を殺したサスカッチに向けて引き金を引く。


「ホギャアアアア!!」

「ぎゃっ!?」


 銃弾を浴びたサスカッチは雄たけびを上げ、岩の塊のような握り拳でキャサリンを殴り飛ばす。

 キャサリンは車に跳ね飛ばされたように飛んでいき、植物園の壁に激突する。


「キャサリン!?」


 リディが吹き飛ばされたキャサリンの方を見ると、キャサリンは起き上がる様子もなく、首がおかしな方向に折れ曲がっている。


「あっ……ああ……」


 サスカッチは幼体からサーマルエナジーを採取していたイザベラを睨む。

 イザベラは恐怖のあまりに漏らし、腰が抜けたのか這うように後ずさって逃げようとする。


「イザベラっ!?」

「二人とも目を閉じろ!!」


 サスカッチがイザベラを叩き潰そうとした瞬間、ミオンがイザベラを抱え込むように飛びつく。


『Dエリア光量最大化します』


 植物園のシステムを掌握したナビィがサスカッチの目をくらませるように照明の光量を一気に最大化させる。


「ギギャアアアア!?」


 サスカッチは照明を直視したのか、両目を庇うように両手で塞ぐ。


「よくもうちのこたちをやってくれたねっ! これでも喰らいなっ!!」


 ターカーが軽機関銃を構えると引き金を引。轟音と共に5・56弾が発射されて、サスカッチを蜂の巣にしていった。

















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