第19話 出発


「彼女たちは全員同じ装備だけど、随分と変わった武器だね」

『5・7mm弾使用のBD9と呼ばれるPDWですね。サイドアームにBD9と同じ弾薬を使用するP55ハンドガンを装備しています。チームで同じ武器を運用することで弾の共用、同一戦術が取れるように考えていると思われます』


 装備点検をしているリディたちを見ると、全員同じ武装で統一されており、銃の種類をナビィが解説してくれる。


「今回の目的地はHランク遺跡の植物園跡地だ。目的はミュータントのコロニー潰しと落穂拾いだ」


 装備確認を終えるとターカーが今回潜る予定の遺跡の概要を教えてくれる。

 遺跡には11段階の格付けがある。最上級のAAAから、最下級のHと未確認。ランクが高いほど危険度が高く、リターンがでかい。Hランクになると二束三文、ほとんど価値がない。

 未確認は発見されたばかりで調査が行われてない遺跡で価値も危険度も情報は皆無の状態である。


 遺跡は寒さを凌ごうとするミュータントが集まりやすく長時間放置すると、コロニーと呼ばれる巣を形成していたりするため、定期的に雪豹が確認してミュータントを駆除したりする。


『マスター、落穂拾いとは?』

「えっと、Hランクの遺跡はほとんど価値のある物は回収されてて、価値があるかないかわからない屑鉄など拾い集める行為をそう呼んでる」

『なるほど、落ちている物を拾う仕草が落穂拾いに見えるのですね』


 ナビィは聞き覚えのない単語を聞いてミオンに質問し、ミオンが小声で答える。


「質問がないなら、出発だ!」


 ターカーがそういうと雪上車に乗車する。

 雪上車は雪豹ギルドが所有しており、定期的に遺跡を巡回している。


 自前の移動手段を持たない雪豹たちはこの雪上車に乗って遺跡まで移動し、迎えの時間まで探索して帰ることになる。


「せっかくだし、お前ら自己紹介しろ」

「どうせ今回限りなんですから、別にいらない……と、思うんですけど……」


 雪上車の中、目的地に着くまでしばし時間が在った為、ターカーは全員に自己紹介するように言うが、男嫌いのリディが拒否するように発言しようとするが、ターカーに睨まれて口ごもる。


「……リディ、Hランクの雪豹」


 ターカーに睨まれ続けて、リディは不承不承という感じで必要最低限の自己紹介をする。


「マスクを取って自己紹介しろ。顔を見せないと雪賊とかと入れ替わった時分からないだろ」


 ターカーに言われてリディはマスクを脱ぐ。

 マスクの下からは金髪のストレートロング、釣り目の気の強い女性が現れ、顔を横に向けて、ミオンの方を見ようとしない。


「はーい、私はキャサリン、Hランクだよ」


 次にマスクを取ったのはリディが男性を入れるなと騒いでた時に無関係を装っていた三人組の一人で、ショートカットの金髪、元気な印象のある明るい女性だった。


「ニノ、Hランク」


 次に顔を見せたのは三人組の二人目で赤毛のポニーテール、鼻筋の通った美人系の顔立ちだった。


「ニナ、Hランク。ニノとは双子なんだよ」


 三人組の最後に顔を見せたのはニノと瓜二つの顔立ちの女性、声色以外は違いがないといっていいほどだった。


「イザベラです。本日はよろしくお願いします」


 最後にマスクを脱いだのはリディに押し切られて黙ってしまった気弱そうな女性だった。

 黒髪のロングに視力が弱いのか、マスクを脱いだ瞬間眼鏡をかけて、車内の暖房で眼鏡が曇り、慌てていた。


「ミオンです。Hランクの雪豹になって二週間前後です」

「はぁ? 雪豹になって二週間? ド素人じゃない!」

「随分とお若く見えますが幾つですか?」


 ミオンが自己紹介すると、リディが素人だと噛みつき、イザベラがミオンの外見を見て年齢を聞いてくる。


「えーっと……孤児院から出たから多分15です」

「このメンバーで最年少じゃん! リディ、子供に噛みつい———何でもありません」


 ミオンが年齢を名乗るとキャサリンがリディをからかおうとして、リディに睨まれて口を閉ざす。


「うほぅ、15と言えば一番おいしい時期じゃん」

「ターカーさん?」


 ミオンの年齢を聞いたターカーが獲物を狙うような視線をミオンに送り、寒気を感じたミオンが不安げにターカーを見た。

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