第16話 返済


「おーい、新人! この荷物を四番カーゴに納品してくれ!!」

「はーい!!」


 フロストシティに無事戻ったミオンは現在、負債返済のためにゴールデンバックの荷物搬送のバイトをしている。

 遺跡で見つけた工事用ライドメタルを操縦してコンテナを持ち上げて、指定されたカーゴへと運んでいく。


『だいぶ操縦もうまくなりましたね、マスター』

「そりゃ、毎日ライドメタルで荷物運んでいたらね」


 ARゴーグル越しにナビィが顔を覗かせて、ミオンのライドメタルの操縦の上達を褒める。


 当初はコンテナ一つ持ち上げるのに右往左往していたが、数日もすればスムーズに荷物を持ち上げて、自分の足のようにすいすいと歩いて所定の場所に納品する。


「おーい、飯の時間だぞー!!」


 正午の時間になるとサイレンが鳴り、作業員たちがたがいに声をかけて食堂へと向かう。


「よお、ミオン。仕事には慣れたか?」

「はい、おかげさまで、ターカー先輩」


 ミオン食堂で食事をしていると筋骨隆々の鼻にばんそうこうを付けた女性が声をかけてくる。


「いやー、最初は男が来るって聞いて警戒していたけど、まじめな子でよかったよ」

「女性が多い職場ですもんねえ」


 食堂を見渡せば調理場の従業員あわせても女性が9割で、男性は数えるほどしかいない。


「うちで働きたいっていう男性は多いんだが、大抵は寄生目当てだったりでなあ……」

「寄生……ですか?」


 ターカーが口にした寄生という言葉にミオンが質問するように聞き返す。


「うちのチームはAランクだからな、稼ぎが良い分、おこぼれや養ってもらおうと近づいてくる野郎が多いんだよ」


 寄生目的で近づいてくる人たちが多いのか、ターカーはうんざりした顔でぼやく。


「そういえばミオン、お前は遺跡潜ったことあるか?」

「えーっと……事故という形でなら……」


 唐突にターカーに遺跡潜りの経験を聞かれ、ミオンは苦笑しながら答える。


「そういや、雪堀中に遺跡に落ちたんだったな。正式に手続きして潜った経験はなしか?」

「そうですね、雪堀数回しただけのHランクですから」


 ミオンはターカーにそう言いながら、自分を振り返る。

 その日の食事と寝床に苦労しながら雪を掘り、ナビィと出会い、遺跡に落ちてライドメタルを拾い、Aランクチームゴールデンバックに拾われて今に至る。

 中々波乱万丈だなと思い返していた。


「明後日、新人の雪豹何人か連れて遺跡に潜る予定だ。良かったら来るか?」

「えーっと……潜る遺跡のランクと条件は?」

「お! すぐに食いつかないのはいいぞっ!」


 ターカーから遺跡潜りに誘われて、ミオンは条件と遺跡のランクを聞く。


 雪豹の中には甘い言葉でメンバーを募って、肉壁やミュータントの餌、分配の段階で背後から撃って戦利品を独り占めにする悪質な雪豹がいると聞いていた。


 そういった雪豹から身を守るために、条件と遺跡のランクはしつこく確認しろと、雪豹になった孤児院の先輩が口酸っぱく言っていた。


「遺跡のランクは最低のHランク。まあ新人たちに遺跡潜りのイロハを教えるための研修の様なもんだ。発掘品が見つかるなら自分の物にしていいぞ。条件としては遺跡潜りに相応しい格好してこい」

「遺跡潜りに相応しい格好ですか……わかりました、ご迷惑じゃ無ければ同行させてください」

「よし、遅刻するなよ」


 ミオンが受けるというと、ターカーは集合場所を教えて席を立った。

 

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