第12話 雪原の出会い


「あー、腹減ったなあ……」


 雪原の中を一機のライドメタルが歩いている。

 そのライドメタルを操縦してるミオンはそう呟き、空腹に耐えながら必死に雪原を歩き続けている。


「ナビィ、こっちで合ってるのか?」

『ええ、衛星データーとリンクして、マイアミ市……訂正、今はフロストシティでしたね。シティへの方角は間違っていませんし、ずれていればその都度報告して修正します』


 ミオンが周囲を見回せば辺り一面銀世界。

 道しるべになるような物はほとんど雪に埋もれ、同じところをグルグル回っているのではないかと不安に思うミオンは何度もナビィにルートがあってるか聞く。


「天気が良ければ、フロストシティの壁かプラントタワーが見えるのに……」


 吹雪というほどではないが風が強く、新雪が風に舞って視界を塞ぎ、遠くの風景が見えない。


「サーマルエナジーも残り少ないし、何とか底をつく前に辿り着けるといいな……」


 ミオンは防寒具のARゴーグルに表示されるサーマルエナジーの残量をを見て呟く。

 元々日帰り予定の雪堀だった為、サーマルエナジーの補充も必要最低限しかしていなかった。


 このサーマルエナジーが尽きれば防寒具の暖房機能は停止し、待っているのは凍死。


 瞬時に凍って死ぬわけではないので、サーマルエナジーが尽きても都市に辿り着けるかもしれない。まあその場合は凍傷は免れない。


 今のミオンにとっては凍傷すら致命的だ。今日明日の食事代すらままならない状況で凍傷を治療する治療費なんて捻出できるわけがない。


「最悪このライドメタルを売ればお金になるかもしれないけど、できれば売りたくないなあ……」

『このライドメタルがあれば今後の雪堀の作業効率も変わります。安心してくださいマスター、私の計算ではサーマルエナジーが尽きる前に都市に辿り着ける確率は87%です』


 不安故にミオンは独り言をずっと呟き続け、ナビィもミオンの不安を払拭するために都市に戻れる確率を試算し、算出結果を報告する。


「87%って……残り13%は?」

『不測のアクシデントです。まず現在搭乗しているライドメタルは長期間放置されており、メンテナンスを受けておりません。また、道中雪堀時に遭遇したような警備ロボやミュータントと呼ばれる存在との遭遇……警告! 此方に向かってくる機体を確認』


 ミオンが残り13%について聞くと、ナビィが緊迫した口調でこちらに向かってくる機体を感知したと警告する。


「機体って!?」

『10時方向、ロックオンを感知! 狙われています!!』


 ミオンが慌てふためいて周囲を確認していると、ミオンが搭乗するライドメタルがロックオンされたとナビィが報告してくる。


「どっ、どうすればっ!?」

『現状では応戦できません。投降を……オープンチャンネルの通信を傍受。チャンネル繋げます』

「そこの工事用ライドメタル! 雪賊でないなら手を上げろ!!」


 ナビィが通信を繋げるとミオンに警告してくる女性の声。

 雪賊とは雪原に隠れ住む盗賊達で、都市間の輸送隊や小規模の都市を襲撃して資源を奪う集団である。


「はいっ! 僕は雪賊じゃないです! フロストシティ所属のHランク雪豹です!!」

「そのまま動くな。怪しい動きをしたら攻撃する」


 ミオンは言われた通り機体の両手を上げて降伏する。

 雪霧の向こうに明かりが見えたかと思うと三機編成の武装したライドメタルがローラーダッシュで雪を巻き上げながら近づいてくる。


『GT-1”フォックス”ですね。アメリカ陸軍でも正式採用されていたライドメタルです』


 ライドメタルの姿を見たナビィが型番を解説する。


 そのライドメタルの後ろには輸送用のトレーラーすら子供に見えてしまうような

無数のカーゴを連結した巨大なトレーラーが先端に装着されたブレードで雪を撥ね退けていくというより、雪の壁を粉砕して突き進んでいくように姿を現す。


『軍用輸送トレーラーDE-7”ロックウェル”ですね。カーゴがモジュール構造で積載量と整備性が高くなっています』


 そのライドメタルの右肩とトレーラーのカーゴには黄金の牡鹿のエンブレムがされていた。


「ゴールデン・バック……」


 ミオンは黄金の牡鹿のエンブレムを見て、そう呟いた。

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