第4話 転機


「腹減った……」


 翌日、ミオンは朝食抜きのまま雪豹ギルドへと向かい、雪堀に参加する。

 超大型のトレーラーに雪豹たちを乗せて目的地まで輸送され、時間になれば雪豹を回収し、都市へと戻る。


 自前の重機やライドメタルを持ってる雪豹たちはそのトレーラーに追従して走行する。

 目的地に着くと、雪豹たちが一斉に降ろされ、我先に旗を目指す。


 旗は事前にギルドスタッフなどが金属探知機などで大まかに探索し、反応があったエリアに旗をさす。


 雪豹たちは早い者勝ちと我先に旗の場所へ向かい掘り始める。

 何が出るかは掘ってのお楽しみ。大抵は地中ならぬ雪中深く埋もれてるので重労働だ。


 昨日今日と天気が良く、雪も降っていない。

 中には昨日掘るだけ掘って何も出なかった場所に再挑戦する人たちもいた。


 ミオンは運良く手に入れた新しいポイントを掘る。

 廃材で作ったシャベルで必死に雪を掘り、何か出てくることを願って掘り続ける。


「あっ! あたりだっ!!」


 ガキンと金属がぶつかる音がしてミオンは思わず拳を握る。


「なんだこれ?」


 逸る気持ちを抑えて雪を掘ると、アタッシュケースを掘り当てる。

 持ち手の所には手錠の輪っかがかけられており、反対側はちぎれていた。


「鍵は……開いてる? 中身は……PDA?」


 アタッシュケースを開けると中にはPDAだけが入っていた。


「電源は……入る? 旧時代品は凄いな」


 適当にいじるとPDAの電源が入り、どこかの会社のロゴマークが表示される。


『おはようございます。貴方が私のマスターですか?』

「うわっ!? 喋った!?」


 液晶画面に白人系金髪の裸の女性が表示され、ミオンを認識して声をかけてくる。


『サポートデバイスなんですから喋ります。マスター登録を行いますので、画面にタッチしてください』

「こうか?」


 PDAの中の女性の指示に従い、ミオンは液晶画面にタッチする。


『素手で行ってください』

「野外では無理だよ。凍傷になっちゃう」


 ブブーという効果音と画面にバッテンマークが出てやり直しを要求してくるが、ミオンは断る。


 野外で防寒具を脱げばたちまち凍死か凍傷のどちらかになる。


『はて? GPSでは現在地はフロリダ州マイアミのはずなんですが……なぜこんな極寒の地に?』

「それについてだけど……」


 画面の女性がこてんと首をかしげてミオンに質問してくる。

 ミオンはこの世界がなぜ極寒の地になっているか説明する。


『なるほど、私が起動する前に文明は滅んでしまったのですね。どうりで衛星通信で基地に呼びかけても応答はないはずです』


 文明が滅び、核による異常気象で世界が氷河期になったことを知ると画面の女性はなるほどとうんうん頷く。


「ところで君は一体?」

『私はナビィ。とある軍事目的で作られたのですが、目的を遂行する前に世界が滅ぶとは……』


 ミオンが名前を聞くと画面の女性はナビと名乗り、本来は旧時代の軍の作戦目的を遂行するためのデバイスとして作られたという。


『マスターのお名前を聞いてもいいですか?』

「俺? 俺の名前はミオン」

『ではマスター・ミオン。貴方の作戦目的を教えてください。私はその作戦を滞りなく遂行できるように全力を持ってサポートしましょう』

「へ?」


 ミオンが自己紹介すると、ナビィは唐突に提案してきた。

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