第2話 ミュータント
「うっ! うわあああああ!!!」
「なんだっ!?」
少し遠いところで叫び声が上がる。
何事かとミオンが声のした方向を見ると、一人の雪豹がミュータントに襲われていた。
雪の中ら黒い毛の生えた触手の様な生物が男に巻き付き、締めあげている。
「くそっ! 野郎、ミミズを起こしやがった!!」
「武器持ってる奴は応戦しろ! ない奴は下がれ!!」
それを見たほかの雪豹たちが叫び、武器を持った雪豹たちが武器を構え、武器を持たない雪豹たちは少しでも離れようとシャベルを投げ捨てたりして逃げる。
「ギャアアアアア!!」
「サーマル装置を潰されてるっ! あの男は助からん! 撃てっ!!」
メキメキメキと骨と金属が圧壊する音が響き、ミミズと呼ばれるミュータントに巻き付かれた男が断末魔を上げる。
男の防寒具の腰につけられた装置が破壊され、黄金色の液体がこぼれ落ちる。
それを確認した雪豹の一人が攻撃の指示を出すと一斉に銃を撃つ。
あっという間にミミズと巻き付かれた男は蜂の巣になる。
男の方は血がすぐに凍りつき、ミミズは体液をまき散らしながらのたうち回る。
「暴れるんじゃねえよ! せっかくのサーマルエナジーが飛び散ってしまうじゃねえか!!」
武器を持った雪豹の一人が悪態をつきながらショットガンでミミズに止めを刺していく。ミミズが絶命すると、雪豹たちが死体に群がり、サーマルエナジーと呼ばれる体液を回収していく。
理由はわからないが、ミュータントたちの体液はサーマルエナジーと呼ばれ、この時代の石油ともいえるエネルギー資源となる。
サーマルエナジーを回収し終えると、今度はミミズを解体し、ブロック肉に分ける。ミュータントはこの時代人間の脅威であり、そして生きる資源でもある。
「こいつはどうする?」
「サーマルタンクがやられた時点でそいつは凍死確定だ。そうでなくてもミミズに巻き付かれた時点で死んでたと思うがな」
男達が言うようにミミズに襲われた雪豹は凍り付いていた。
防寒具には全身にサーマルエナジーを循環させて暖を取る機能がある。
それを壊されると防寒具の性能にもよるが、ミオンが着ている安物とかだと、10分も経たないうちに凍死が確定する。
ミミズという脅威が排除されたことが分かると、散らばっていた雪豹たちが戻ってくる。
どさくさに紛れて他人のポイントに入り込もうとして、雪豹同士喧嘩になっている場所もある。
ミオンの採掘ポイントはミミズが現れた所から離れていたので逃げる必要もなかったので誰かに奪われることも無かった。
銃声が一発響いた。
銃声がした方を見ると、先ほど採掘場所を横取りしようとして揉めていた雪豹が、揉めていた相手に撃たれて死んでいた。
どうやら欲をかいた彼は命で代償を払う羽目になったらしい。
周囲の雪豹たちは我関せず作業を続ける。
都市内部での殺人は犯罪だが、都市外部……採掘現場のように都市の外では法はなくすべて自己防衛、自己責任、それが当たり前の世界だった。
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