雪豹物語

パクリ田盗作

第1話 文明が滅びた極寒の世界


 あたり一面銀世界の雪原。

 その雪原で旗が刺さっている場所の雪を一生懸命一心不乱に掘る作業をする者達がいた。


 ある者は顔全体を覆う防寒具に身を包み、シャベルで雪を掘る者。

 またある者は工業用重機で、またある者は数は少ないがライドメタルと呼ばれる二足歩行の人型ロボットに巨大なシャベルを持たせて雪を掘っている者達がいた。


「やった! 当たりだ!!」


 雪を掘っている誰かが叫ぶ。

 作業していた男達が手を止めて、叫んだ男の方を見ると、雪の下から大破した戦闘車両の上部が顔を覗かせていた。


「……やっぱ、重機かライドメタルがないといいの当たらないか……」


 戦闘車両を掘り当てた男を羨ましそうに見つめていた一人の小柄な男がそう呟き、自分の手に持つシャベルを見る。

 廃材を加工して作った間に合わせ品。なんとか雪を掘ることができるが、掘るたびに持ち手がぐらつき、雪の重さでシャベル部分が曲がりそうになる。


「まずは正規のシャベルを買えるぐらい稼がないと……はぁ……」


 ため息をつきながら雪を掘る。

 ガキンと金属がぶつかる感触が手に伝わり、男は期待を込めて雪を掘る。


「……なんだ……旧時代の看板か……いや、屑鉄として売れるか」


 雪を掘って出てきたのは看板。男は一瞬がっかりするが、気を取り直して看板を掘り出す。


「えーっと……マイアミへようこそ? 昔の地名かな?」


 掘り出した看板は南国のビーチの写真と水着姿の男女がサーフィンする絵が描かれていた。


「……昔この地域は雪も降らない暖かい地域だって聞いたけど、皆防寒具もつけずに薄着で暮らしていたなんて信じられないよ」


 男は看板の絵を見て呟く。

 幼いころ、孤児院の先生が言っていたことを思い出す。


 遠い昔、核戦争と言われる戦争で世界が異常気象による氷河期に覆われた。

 世界中が雪と氷に埋もれ、今のような極寒の世界になった。


 かろうじて生き延びた人達は比較的安全な都市跡に拠点を作って、雪や氷を掘って過去の文明の遺産を掘り当てて暮らしていると。


 男はため息をつきながら雪を掘る。


 男の名はミオン。

 ミオンは孤児だった。

 両親の顔は知らず、物心ついた時には孤児院で育ち、15になると孤児院から出て行った。


「はぁ……雪豹になれば暮らしていけると思ったが……そんなことなかったな」


 雪豹とは氷や雪の下に埋もれた旧時代のテクノロジーを掘り当てたり、この極寒の世界に適応したミュータントを狩る職業の名称だ。


 孤児院出身でなおかつ、こんな末法の時代。なんの後ろ盾も技術もない男が働ける場所などほとんどなく、資格も何もなくともなれる雪豹になった。

 孤児院から準備金としてもらったお金は最低限の防寒具と雪豹登録料を払ったところで底をついた。


 昔から手先は器用だったミオンは廃材をかき集めてスコップと背負子を作って今雪を掘っている。

 換金の当てになるような物を掘り当てなければ、今日の寝床と食事すらままならない状態だった。


 

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