593.【後日談7】掃除してにゃ
□前書き□
※食事中の方注意。
□□□□□□□□□□□
昼。雑貨屋クローバーにて。
白猫リリーが、店のすみっこの猫砂トイレで、うーんうーん気張ってる。
お、ウ〇チが出たらしい。
リリーは振り返ってウ〇チを見て、それからウ〇チから目を離しザッザッと砂を前足でかく。
だが、砂はきちんとかからなかったようだ。
ウ〇チがそのまま残っている。
リリーは、臭そうな顔をして、さらに勢いよくザザザザッと砂をかく。
だが、砂はトレーから飛び散るばかりで、一向にウ〇チにかからない。
やがてリリーは諦め、カフェコーナーで食事中の金髪エルフ、アウレネの所へ向かう。
「みゅ~(ウン〇したにゃ、掃除してにゃ~)」
「了解です~」
アウレネは食事を中断し、猫砂トイレへと向かう。
近くのネコ科魔獣がアウレネの食べかけに近づくが、食べ物には見えない壁が張られていて近づけなかった。
アウレネは、デカいウ〇チをスコップで袋に入れ、四次元空間に仕舞う。
「掃除しましたよ~」
「みゅ~(違うにゃ! おいらのウ〇チはこっちにゃ!)」
「ありゃりゃ?」
アウレネが掃除したのは、リリーが使った隣のトイレだった。
改めてアウレネは掃除を始める。
別に放っておいても、1時間に1度、ホムンクルスが掃除をしてくれるのだがな。
アウレネが最初に掃除したトイレを、待ってましたとばかりに黒いネコ科魔獣がやって来て、トイレを開始する。
どうしてネコ科魔獣は、掃除したばかりのトイレを使いたがるのだろうか。
黒猫魔獣の背中を、リリーが前足でポフポフする。
おい、トイレの邪魔をするんじゃない。
「今日も健康そうなウ〇チです~」
「みゅ~(最初隣のウ〇チと間違えたくせに、いったいおいらのウン〇の何が分かるんだにゃ)」
アウレネは掃除を終え、再びカフェコーナーへ向かう。
リリーも付いていく。
そしてアウレネが今掃除したトイレは、オレンジ毛皮のネコ科魔獣が使い始める。
うーむ、掃除の間隔をもっと早くした方が良さそうだな。
◇ ◇ ◇ ◇
夜。雑貨屋クローバーのカフェコーナーにて。
銀髪の魔女、シルフ婆さんが、最新作のコーヒー、コピ・ルアクを飲んでいる。
「ほぅ、意外と飲みやすいのぅ」
「にゃー(俺の知ってる中でも、最高級のコーヒーだ)」
「バニラのような独特な香りがするの。
コーヒーっぽい苦い味ではないから、好みが分かれそうじゃが。
ところで、あまり売れてないようじゃの」
「にゃー(値段が高いのと、豆の作り方で避けられてるっぽい)」
「そりゃ
シルフ婆さんが笑うが、冗談じゃないぞ。
この間、火車に販売を止められそうになった上に、悪評が先走ってしまったのだ。
結果、予想の売り上げを大きく下回っている。
「にゃー(まったく、困ったものだ。いわれのない悪評で売り上げが落ちるのは。
この新作ニシンパイも、根も葉もないウワサのせいで全然売れない)」
「それに関しては純粋に美味しくないからじゃないかの?」
俺はニシンパイを四次元空間から取り出す。
素晴らしい香りだ。俺は猫だから食べられないが。
「バステト様や、それを早く仕舞ってくれんかの。コーヒーが不味くなるわい」
「にゃー(こんなに美味しそうなのに)」
ニシンパイを四次元空間に仕舞いなおす。
猫になって長いせいか、人間に受ける物の感覚がさっぱり分からなくなってしまった。
シルフ婆さんが、コーヒーを飲み干し、ふぅとため息をつく。
「ワシの夢はのぉ、バステト様。エルフが人間に怯えずに、慎ましやかに暮らせる。
そんな世界を作りたかったのじゃがな」
「にゃー(急にどうした?)」
「年寄りのうわごとじゃよ。ワシが生きていた頃も、居なくなった後も、変わらずエルフはマイペースに暮らしておった。
ワシが心配するまでもなく、エルフは強くしなやかにそこに在った。
ワシが魔王だった頃にやった事は、人間とエルフの戦争を無駄に増やしただけだったのではないか、と」
「にゃー(無駄だったかどうかは当事者のエルフ達が決めることだ。彼らはシルフ婆さんの死後も、あれほど崇拝していた。
それが答えなんじゃないのか?)」
「どうだかの。思い出というのは美化されるものじゃからな」
「にゃー(美化といえば、そういえばエルフの連中は、シルフ婆さんを若返らせようとしてたみたいだが)」
「余計なお世話じゃ、と怒鳴りつけたがの、ヒッヒッヒ」
シルフ婆さんが俺を撫でようと手を伸ばしてくる。
俺はそれをペシッと猫パンチで拒否する。触るなし。
「バステト様や、ワシの夢はもう十分に叶った。
昔は弱いエルフは捕えられて商品にされておったが。
今は彼らは人間を恐れること無く、堂々と都市を歩いてゆける」
「にゃー(まぁ、等しく魔獣の奴隷、という境遇だが)」
「バステト様には、叶えたい夢は無いのかの?」
「にゃー(あまり強く望んだら、現実改変してしまうから、妙な連中に目を付けられるんだよなぁ)」
ま、元々俺には、大層な野望など微塵も無いのだが。
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