586.【後日談7】昼寝


・トミタ(猫)視点



昼、学校区画のとある教室にて。

もうすぐ、ネコ科魔獣用の授業が行われる。

なので俺の周りはネコ科魔獣だらけ。


教室に居るネコ科魔獣達は眠そうだった。

それもそのはず、丁度昼ご飯を食べたばかり。

人間ですら眠いのに、昼寝好きのネコ科魔獣はなおさら。


とて、とて、とて。

今日の客員講師のネコ科魔獣が教壇(低くて頑丈)に登り、挨拶をする。



「なぁー(こんにちは皆さん、今日は良い天気です。昼寝日和ですね)」


「にー(あ、あの先生は!)」


「みゅ~(レジェンドオブ昼寝にゃ!)」


「にゃー(テトラホーンキャットだぞ)」



頭にねじれた角が4本生えた、ライオンっぽいたてがみを持つトラ柄魔獣が、今日の講師だ。


ちなみに俺は、ヨツバに『猫さんはオッサンっぽくて猫っぽくない』と言われたので、猫修行と暇つぶしを兼ねて授業に参加中。



「なぁう(我々の睡眠時間は1日の半分から3分の2。

つまり睡眠の質が、ニャン生の質に直結するといっても過言ではない。

今日は皆さんに、素敵な睡眠を送るための秘訣を用意しました)」


「まうなんみゅ~(おおおおーー!)」


「なぁん(まずは天気情報! 我々は直感で、明日の天気の予想は出来ます。

ですが、首輪型魔道具のお天気情報で、より正確な情報が入手出来ます!

使い方は……)」



その後、昼寝用おすすめグッズ、良い昼寝場所の見つけ方、昼寝場所がバッティングした時の相手の追い出し方、等々を教えてもらい、今日の授業は終了となった。



◇ ◇ ◇ ◇



翌日。雑貨屋クローバーにて。


俺がレジカウンターに横になってのんびりしていると、黒色の子どもネコ科魔獣が、カウンターに乗ってきた。



「にー(今日こそは、肉球魔王様が昼寝場所にしているところで寝るぞー!)」


「にゃー(ここで寝るのか? どうぞ。)」



落ちないようにふち付きのクッションを置いてやり、俺は床へジャンプ。

子どもネコ科魔獣はクッションの上に乗り、気持ちよさそうに目を細める。



「みゅ~(おおっ、良さげな昼寝場所発見にゃ! 今こそレジェンドオブ昼寝の奥義、昼寝妨害毛づくろいを試す時にゃ~)」


「にゃー(おい、子ども相手に大人げない事するんじゃないぞ)」



子どもネコ科魔獣が居るカウンターに飛び乗ろうとしていた白猫リリーを、両前足でホールドし阻止する。



「みゅ~(離すにゃ、おいらは昼寝がしたいのにゃ~)」


「にゃー(他の場所に行け、他の場所に)」


「みゅ~(探すのが面倒にゃ)」



リリーが何度もカウンターに飛び乗ろうとして、その度に阻止する。


あんまりにもしつこかったので、買い物用の大き目な紙袋を1つを用意し、リリーの前に広げてやる。



「にゃー(ほーら、ここも良いぞ)」


「みゅ~(仕方ないにゃ~)」



リリーはスポッと紙袋に入る。

ゴロゴロ言っている。

気に入ってもらえたようだ。


俺は地面にゴロンと転がる。


昼寝なんて、よほど暑かったり寒かったり天気が悪かったりしなければ、どこででも出来るってもんだ。

人間いたる所青山有り。

猫到るところ昼寝場所有り。

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