584.【後日談6】大魔導士様 その19


・ケンイチ(猫)視点



俺達を背中に乗せ、中央都市チザンまで運んでくれている、この巨大ネコ科魔獣。

名前は猫トラというらしい。


猫トラの背中のこのモフモフ具合、たまらない。

まるで羽毛布団に包まれているかのよう。


ふみ、ふみ、ふみ、ふみ。

前足を交互に突き出し、猫トラのモフモフな背中をモミモミする。



「ケンイチ、何をしている?」


「ニャワ(俺の事は、うどん職人と呼んでくれ)」


「訳が分からない」



ゴロゴロゴロゴロ。


ヒギーに怪訝な顔をされるが、中央都市チザンに着くまで、俺はうどん職人を極めるのだった。



◇ ◇ ◇ ◇



・ケンイチ(猫)視点



中央都市チザンの王城に着き、猫トラを降りる。


門で俺達を迎えてくれたのは、大きな白い竜だった。

白い竜は、棺桶を担いでいる。



「ただ今戻りました、母上」


「ブロン、よく戻りました。良い目になりましたね。

そしてブロンの親友の方々、来てくださってありがとうございます」


「母上、その棺桶……」


「えぇ。あなたの父親、私の夫が入っています。

私は夫の亡骸とともに、遠くの山で静かに隠居することにしました。

ブロン、今日からあなたが国王として、この国を治めるのです」


「母上、即位式はいつ行います?」


「それはあなたが決めなさい。

ただ、夫の遺言通り、国王の名は、即位式を待たず今この場ですぐに受け継ぐことになります。

今日からあなたはゴルンを名乗りなさい」


「謹んでお受け致します」



ブロンの体がピカーっと光る。

力の継承だ。


光が収まると、ブロンの体はムキムキ度合いが増していた。



「私は、夫の亡骸とともに、心を癒す旅に出ます。

新国王ゴルンよ。あなたが信頼する仲間とともに、国を豊かに、国民を幸せにするのです」


「承りました」



そう言って、ブロンの母親の白い竜は、空高く飛び立ってしまった。



◇ ◇ ◇ ◇



・トミタ(猫)視点



ゲームで疲れたのか、穂ちゃんはうつらうつらしている。


と思ったら、俺の背中に抱き着いてきた。



「にゃー(離してくれ)」


「うぅーん。すぴー、すぴー」



俺をホールドしたまま、寝落ちしやがった。


俺は命君の方を向き、目で『助けてくれ』と訴える。

おい、何写真を撮ってるんだ。

どうにかしてくれよ。


ゴルンの方を見る。

お、体が透明になってる。



「力の継承が始まったかぁぁああああ!」


「にゃー(悪魔にとって、名前は魂そのもの。

つまり名前を失ったらゴルンは名も無き悪魔になり、短命になる。

それでも良いんだな?)」


「あぁ……」



ゴルンが承諾している以上、継承を止めることは出来ない。

せっかく命君に匿ってもらったゴルンだが、間もなく亡くなってしまうことだろう。

残念だ。



「ふーん。じゃあ新しい名前は『ヒョロ助』だ」



――――――――――――――――――――――――

悪魔を『ヒョロ助』と名付け、配下に加えました。

――――――――――――――――――――――――



ゴルンの透明化が止まり、ガリガリになったゴルンがそこに居た。



「「……」」


「名前を付けてくれって前振りだろ?

え? 何してくれちゃってんの、って顔するのやめろよ」



俺が思ってたよりも、命君は権限が強いらしい。

悪魔に名前を与えるって、いちから悪魔生成するより100倍は難しいはずなのだが。


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