575.【後日談6】大魔導士様 その11


・トミタ(猫)視点



朝。宿屋を出た俺は、雑貨屋クローバーへと向かう。

四次元ワープで、レジカウンターの上へと乗る。



「にゃー(さてと、魔獣幹部ケルベロスとの商談を始めるか)」



首輪型魔道具は、L〇NE通話のような事が出来る。

ケルベロスへと繋ぐ。


とぅるるるるる。


がちゃ。



「ガルル(何だよ肉球魔王)」


「にゃー(何だよ、じゃないぞ。

魔獣都市ホネブトに雑貨屋クローバー支店を置くから、その商談を昨日する約束だったじゃないか)」


「ガルゥ(昨日は死にかけたんだ。俺を少しは労われよ)」


「にゃー(もう元気だろ? 税の取り分をさっさと決めて、支店を開きたいんだ)」


「ガル(……そんな事のために、俺を死の淵から蘇らせたのかよ?)」



そんな事とは何だ、そんな事とは。



「にゃー(とっとと決めるぞ。純利益の30%だ)」


「ガルゥ(それはホネブトの最低税率だ。

雑貨屋クローバーは外部の組織だから内部と同じには出来ねぇ。60%)」


「にゃー(ぼったくるんじゃねぇ。35%)」


「ガルル(50%)」


「にゃー(魂戻してやったじゃーん。38%)」


「ガル(頼んでない。48%)」


「にゃー(間を取って40%は?)」


「ガルルル(47%……言っておくが他の外部組織には50%を課してる。

てめーの所だけこれ以上安くする気はねーぞ)」


「にゃー(もう一声! 45%!)」


「ガル(駄目っつてんだろ! 47%だ! あんまり安くすると都市の老舗が潰れる!)」


「にゃー(ちぇっ。分かったよ)」


「ガルルル(交渉成立だ、まったく、面倒くせぇ)」



俺もケルベロスも、商談に関しては素人である。

大阪のおばちゃんだったら、もうちょっと上手くできただろう。



「にゃー(じゃあそういうことで、よろしくなー)」



がちゃり。俺は通話を切る。


どうせ税に関しては5年ごとに見直しがされるし、20年後には老舗扱いされ30%になるのだ。

あまり気にしていない。



「にゃー(さて、掃除でもするか)」



俺は、ニャホオクで買った黒いル〇バの上に乗り、スイッチオン。


だが、ルン〇は動かない。

俺が重すぎるせいか。



「にゃー(【変性錬成】)」



そんなル〇バを、錬金術で魔道具に変え、移動力を上昇させる。


スー。


床に落ちてるネコ科魔獣の毛を、元ルン〇な魔道具が吸い取っていく。

ホコリは落ちてない。1時間に1度掃除してるからな。


スー。クルクル。


ルン〇の回転に合わせて、俺も回る。



「みゅ~(おいらも乗るにゃ~)」



白猫リリーが、ル〇バをテシテシしばく。

やめろ、壊れるだろ。


仕方ないのでリリーにルン〇の上を譲る。

スー。クルクル。

リリーは満足そうにしている。



「なー(いいなーアレ欲しーい)」


「あんなー(リリーが、オモチャで、くるくるりん!)」


「にゃー(オモチャじゃないぞ。というか、何で順番待ちしてるんだお前ら)」



結局、俺のル〇バは雑貨屋クローバーに来た小型ネコ科魔獣用のアトラクションとなるのだった。



◇ ◇ ◇ ◇



・ケンイチ(猫)視点



魔獣都市マタタビの門の前へと降り立つ。

そして門で順番待ちすることしばし。



「グルゥ(入れ)」



魔獣都市マタタビは、ネコ科魔獣は基本ウェルカムらしい。

ろくに持ち物検査とかされずに、門番のひょうっぽい魔獣に中に通される。


都市は、石造りの家が多い。

というか木製の家の壁がボロボロになってる。

絶対爪とぎに使っただろアレ。



「ニャワワ(さて、まずは宿探しだ)」


「ケンイチ、宿のグレードはどうする?」


「ニャワ(娼館に使う金を考えると、あまり使えないな。

だけど馬小屋みたいな場所で寝るのも嫌だし。ま、普通のところで)」


「一般的なグレードの宿で、評判が良い所はこことそこと……」



ヒギーは左前足の一部を地図に変身させ、星印でお勧めの場所を示してくれる。

だが、俺の左前足から生えている地図を見て、通りすがりのネコ科魔獣や人間が、ギョッとする。



「ニャワワ(ヒギー。地図と宿の場所は覚えたから仕舞っていい)」


「了解」



地図が収納され、ヒギーは再び首輪型魔道具から極小映像を投影し、読み放題サービスを利用する。



「ニャワ(宿を取った後、先に娼館に行くべきか、肉球魔王に会ってヨツバと母の蘇生を頼むべきか……)」


「……!? ケンイチ!」



俺がヨツバの名前を出した瞬間に、殺気を感じた。

殺気の方角を見る。


屋根の上に、トランプに手足頭が生えた小人?


殺気はすぐ無くなったが、小人は逃げていく。



「ニャワワ(逃がすか!)」



俺は【縮地】でそいつの後ろに移動し、



「ニャワ(【錬菌術】)」



粘度の高い菌糸(きんし)をまとわりつかせた。



「逃げろケンイチ! 罠だ!」


「ニャワ(チッ)」



ヒギーが警告してくれたが遅い。

小人には仲間が居たようで、俺達はまんまと彼らの張った結界の中に閉じ込められた。


メルヘンな見た目の城、広場、花壇。

ウサギや犬などの被り物をした小人、先ほどのようなトランプに手足頭が生えた小人……



『ようこそ不思議の結界へ。我々はヨツバ様を主としてお仕えしております、ホムンクルスです。

ケンイチ様、主のヨツバ様に、どういったご用事かお聞かせ願えますか?』



トランプ体の兵隊小人の1人が、俺に話しかけてきた。


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