568.【後日談6】大魔導士様 その3
・トミタ(猫)視点
夕方の雑貨屋クローバーにて。
夜の店番はホムンクルス達に任せるので、引き継ぎ前に、俺とヨツバは店内の見回りをする。
「にゃー(ヨシ! 異常無し!)」
「まー、私達がきちんと見なくても、後でホムンクルス達がしっかりチェックするでしょうけど」
ヨツバよ。
まるで俺まで手抜きでチェックしてるみたいな言い方はやめろ。
俺達は店のチェックを終え、ホムンクルス達に引き継ぎを済ませて、店を出た。
「ヨツバー、猫さーん」
宿屋へと向かう途中、黒髪少女のネルが現れた。
ネルは背中に、市場で買った野菜が沢山入ったカゴを背負っている。
「ネル姉さん、野菜重くないです? 四次元空間を使わないんですか?」
「駄目だよーヨツバ。運動不足になっちゃうよー」
「そうは言っても、カゴの中に猫が入ってるじゃないですか。
あーあ、野菜を
「みにゃ(うーまーいーぞー)」
カゴの中でブロッコリーを齧ってた黒ブチネコ科魔獣が、空にビームを吐く。
ネコ科魔獣は基本肉食のはずなのだが。ベジタリアンか。
ヨツバがネコ科魔獣をカゴから取り出し、地面に置く。
だが、ネコ科魔獣は再びカゴの中に飛び入る。
「こら! いい加減にしないとお巡りさんに突き出しますよ」
「みにゃう(えー)」
「いいじゃん、このまま連れて帰ろうよー」
ベジタリアン猫がカゴに入ったまま、俺達は宿屋に着く。
そして厨房で包丁を研いでいたナンシーさんは、持ち込まれたカゴの中を見て呟く。
「あら、新鮮なお肉ねぇ。夕食は鍋にしようかしら?」
「みにゃー(ひぃぃいいいい!? 食べられるぅ!?)」
包丁をキラーンと輝かせたナンシーさんを見て、ベジタリアン猫は慌ててカゴから出て、逃げ去ってしまった。
さすがはナンシーさん、困ったお客さんを扱う年季が違……おっと寒気が。
◇ ◇ ◇ ◇
・ケンイチ(猫)視点
「ワン(ちっ、猫公かよ。さっさと通れ)」
番兵の犬が悪態をつきつつ、通してくれた。
通行料とかは要らないようだ。
ここは魔獣都市の1つ、ホネブト。
ちなみに1000年前ここはドワーフの国だったはずだが、さすがに国名は変わっていた。
魔獣国チザンと言うらしい。
どこを見渡しても、犬、犬、犬。
ここホネブトは、イヌ科魔獣の都市なのだそうだ。
人間は犬の奴隷として、首輪が鎖で繋がれている。
犬達は銀色の足輪を付けていた。
魔道具の1つらしく、これで買い物が出来るのだとか。
地域によっては首輪型であり、猫は基本首輪型を選ぶらしい。
人間達の首輪の鎖は、犬達の足輪に繋がれており、「バゥゥ!(おい、散歩に行くぞ!)」と犬が人間を引きずっていた。
その様子を横目に、俺は質屋に入り、持っていたダンジョン産の魔道具の1つを首輪型の買い物魔道具と交換。
ついでに魔道具のいくつかを金に換え、準備は万端。
「ニャワ(よーし、金も入ったし)」
「ケンイチ、この首輪型魔道具は凄いな。
AR電子書籍読み放題サービスが、たったの1000マタタビで使えるなんて」
「ニャワワ(って、俺の金を勝手に使うなよ!?)」
「……」
駄目だ。ヒギーが勉強モードに入った。
俺の左前足の肩近くからニョキニョキと小さな触手を伸ばし、メチャ早い速度で電子書籍を読んでいる。
この状態だと、何を言っても無視されるか生返事される。
「ニャワ(……あと2時間したら娼館に行くから、それまでに済ませろよ)」
「あぁ」
勉強熱心な左前足に呆れつつ、俺は今日の宿を探すことにした。
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