562.【後日談6】さらばおいなりさんω その2


□前書き□


※手術の手順はあくまで魔獣都市マタタビ式です。

実際の手術の手順と違っても知りませんww




□□□□□□□□□□□




翌日の夜。

森の自宅にて。


俺はベッドの上にちょこんと座り、ドローン状の映像音声配信魔道具に向かって、手術の事を説明する。

この放送は魔獣都市マタタビのみに流れる。



「にゃー(避妊手術は明日行われる。今日の夜から手術が終わるまで、飲食は禁止だ。

手術は全身麻酔で行われる。寝て起きたら終わってるぞ。

絶飲絶食は、手術中の寝ている間に逆流による誤嚥が起きないようにするためだな)」



絶食に備えて、夕食は早めに食べた。

もちろん明日の朝食も抜きだ。



「にゃー(避妊手術を行う理由だが、ネコ科魔獣が増えすぎないようにするためだ。

食料の供給には限りがあるからな。このままだと、子どもが増えすぎていずれ食料が全員に行き渡らなくなる。

避妊手術を行うことにより、未来の子どもが飢えないようにするんだ)」



実際は食料問題以外にも、昨日魔獣幹部達が話したように、住居スペースや世話する人間やサポート等が足りなくなるのだが。

ネコ科魔獣相手の説明なので、あまり複雑な事を喋っても伝わらない。



「にゃー(避妊手術を行うにあたり、希望者の精子卵子……子種を冷凍保存する。

一度避妊手術をしたがやっぱり子どもが欲しいという夫婦も、後から子どもが作れるから安心だ)」



あとは何かあったっけな。

メリットとデメリットの話か。


喧嘩しにくくなるとか、発情期が無くなるとか、望まぬ妊娠が無くなるとか、そういうのは前世で言えば、飼い猫を飼ってる人間のメリットだな。

だが残念ながら、魔獣都市マタタビでは、それらはメリットにならない。


逆にデメリットに関して、太りやすくなる、子どもが作れない、また手術のリスクもある。


手術のリスクについては、出血はそれほどだが、麻酔だな。

たまーに血圧が下がり過ぎてショックを引き起こす場合があり、最悪死ぬ。これは人間でも同じ。

ま、その場合は薬等ですぐに対処するから大丈夫。

魔獣都市マタタビの医療スタッフは優秀だからな。


ま、この辺の話はしなくていいか。

いたずらに不安をあおる必要も無いだろう。



「にゃー(じゃ、また明日)」



映像音声配信魔道具の電源を切り、寝ることにした。

おやすみなさい。



◇ ◇ ◇ ◇



翌日、病院の診察室にて。

俺は軽い診察を受け、問題無さそうなのでそのまま手術を受けることとなった。

黒いヒョウ柄のネコ科魔獣の医者の説明を受ける。



「ガルルル(以上が手術の概要になります。質問はありますか?)」


「にゃー(大丈夫だ)」


「ガルルゥ(では手術室まで案内します。ついてきてください)」



俺は医者の黒いしっぽの後ろを、てくてくと歩いて、ついていく。

なお、この様子も、俺の後ろについてきてる映像音声配信魔道具で配信中だ。


手術室の中に入る。

手術台の上に寝転がるように言われたので、へそを上にして寝転がる。

ばんざいポーズ。


俺の後ろ脚をアルコール消毒される。

そして点滴などを入れるラインが確保された。



「ガルル(ではこれを吸ってくださーい。1、2、3と順番に数えてくださいね)」


「にゃー(いーち、にー、さーん、しー)」



吸入器を鼻に当てられ、吸入麻酔を吸う。


って、しまった。

俺の耐性だと麻酔が効かない。

仕方ない、一時的に耐性を落とすか。



「にゃー……(ごー、ろーく…………)」



すやぁ。



◇ ◇ ◇ ◇



白い床がどこまでも続く空間。

おや、ここは誰かの神スペースのようだ。

俺の魂が招待されたっぽい。



「お久しぶりですねトミタミナモト。

私は冥王ハーディス。残念ながらあなたは死にました」



黒い髪で、修道女のコスプレをした女神が、そう言った。

誰だこいつ。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る